宇宙からのニュートリノを観測するスーパーカミオカンデ、12年ぶりに公開
2018年9月11日 15:42
東京大学宇宙線研究所は9日、ニュートリノを観測するスーパーカミオカンデを12年ぶりに公開した。超新星爆発に備えて24時間体制で観測を続けていたが、今回運転を停止、水タンクのふたを開けて水を抜いた状態での公開となる。
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スーパーカミオカンデは、宇宙から飛来するニュートリノを観測する装置だ。電荷をもたない素粒子であるニュートリノはほかの物質とほとんど反応しないため、物質を貫通する。われわれの体を1秒間に約1兆個ものニュートリノが貫通するが、それを感じることはない。
ところが宇宙から飛来する大量のニュートリノは、まれに物質と反応する。大きな水槽の構造をしたスーパーカミオカンデでは、そのニュートリノを検出しようとしている。
今回スーパーカミオカンデから水を抜いたのは、タンクを補修するためだ。水を綺麗に保つために1時間当たり60トンもの水を循環させるが、循環の速さを2倍にするよう配管の改良も実施する。またノイズが多くなるなど不具合が発生しているため、搭載された光センサーを交換するという。
スーパーカミオカンデで観測するのは、超新星爆発の際に放出されたニュートリノだ。宇宙誕生後から現在まで、超新星爆発によって放出されたニュートリノが宇宙空間に漂う。この宇宙に蓄積されたニュートリノを観測することで、星が形成された歴史をたどることができるという。
スーパーカミオカンデのタンク内に貯められた純水には、ガドリニウムが添加されている。超新星爆発により放出されるニュートリノのうち、水と反応しやすいのが「反電子ニュートリノ」と呼ばれる素粒子だ。水に添加されたガドリニウムにより、宇宙から飛来するニュートリノとノイズとを区別できるようになるという。
超新星爆発の起こる頻度は、ひとつの銀河内で30年から50年に一度と非常に稀だ。1987年に世界ではじめてカミオカンデ実験で観測されて以降、銀河付近で超新星爆発が発生していないため、超新星爆発により放出されるニュートリノは観測されていない。
水を抜いての補修作業は9月末まで続く。10月から水の供給を開始、12月中旬にニュートリノの観測を再開する予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る)