JR東、新幹線のセキュリティを向上 防犯・護身用具を車両・駅に配備
2018年9月5日 08:09
JR東日本は4日、定例社長会見の中で、新幹線におけるさらなるセキュリティ向上の取り組みについて概要を示した。
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新幹線の安全神話が崩れたのはそもそも2015年6月に発生した火災事件に端を発する。乗客男性が東海道新幹線内で焼身自殺を図ったこの事件で、関係の無い女性の乗客が巻き添えで死亡するという惨事を招いた。
記憶に新しいのは今年6月に発生した殺傷事件だ。刃物を持った男が突然乗客を切り付け、襲われた乗客の女性2名が重傷、襲われた女性客をかばって男をとり押さえようとした男性が襲撃され死亡するという惨事となった。
これらの事件以来、新幹線内での安全神話が崩れ去った。報道を見た人の多くが、新幹線は走行中はまったくの密室となり、逃げ場がないことを実感したに違いない。
今回の社長会見では、このような車内で発生した思わぬ事件を教訓に、それをいかに生かして行くのかを示したと言って良いだろう。
同社では新幹線のセキュリティ向上に向けて、具体的には車内警備の強化や廃車予定の一部車両を除くすべての新幹線車両に車内防犯カメラを設置するのに加え、犯罪防止とさらなる安全確保のため、新たに乗務員に対する「防犯・護身用具の配備」、「医療器具の配備拡充」、「緊急時における情報共有手段の整備」、「新幹線車両の座面脱着容易化」を進める。
特に注目度が高かったのが、座面の着脱だ。直近に発生したのぞみ車内での無差別殺傷事件で、利用者の多くが車両の座面が着脱ができることを知ったのではないだろうか。この点についてはセキュリティ向上の面からもより一層の改良・改善がうたわれている。同社の新幹線車両(普通車)には、座面スライド機構等により座面が取り外しにくい構造のものがあるため、その固定方法を見直し、脱着可能な構造への変更を進めるというのだ。
このほか、緊急時における情報共有手段の整備も細やかに、具体的に整備されていることが会見の中で示された。
有事に対し、いかに対処すべきかを問われた結果と言って良いだろう。発生した事件を分析し、教訓として生かす。その結果、安全を手に入れるために新幹線の車内は監視の目が張り巡らされた。かつての性善説で、かような事件の発生を想定すらしていなかった時代が懐かしい。(記事:M_imai・記事一覧を見る)