スルガ銀行を巡る疑惑はどこまで、どれだけ拡散を続けるのか?
2018年9月4日 12:11
スルガ銀行を巡る疑惑を解明している第三者委員会は、当初8月末日を期日としていた調査報告の期日を1週間延期すると発表した。本件のような社会の注目を集めている問題の場合には、公表の時期に間に合わせるために、逆算して日々の作業を振り分ける。通常の勤務時間などは度外視して相当過酷な日程にはなるが、最終期日には予定通り公表される。今回公表時期が延期されたということは、スルガ銀行の闇が想定された以上広く深いためか、集約を迫られる時期にスルー出来ない重要な疑惑が噴出したと考えるの自然だ。
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スルガ銀行問題では「かぼちゃの馬車」を販売してきたスマートデイズが良く知られているが、アパートの施工や管理を行う東証1部上場企業の「TATERU」が西京銀行のローンを利用する案件で、銀行残高の改ざんを行った事例が判明して大きな注目を集めている。公表された件は幸いにも借入希望者がスルガ銀行の話題を連想して調査した結果、改ざんが判明し融資が行われることはなかった。
不動産業のことを「せんみつ屋」と揶揄する人が以前はいた。「不動産屋は千に三つしか本当のことを言わない」という不信感を表現したもので、良心的な商売をしている不動産屋さんには失礼な話だが、現実でもある。不動産取引には法的な決まり事や制限が多い。歴史的には誇大で紛らわしい表現を駆使して、消費者を誤認させることが当たり前に行われて来たため、法的な規制が必要になり積み重なって運用されている。
現在懸念されているのは、スルガ銀行同様の手法が全国に拡散しているのではないかということである。銀行の決まりごとはどの銀行でも大差ない。だが、借入希望者の資力を「預金通帳」で確認するということだけ取っても、末端の担当者が「コピーでもいいです」と口にした途端に、裏をかこうとする輩が現れるかも知れない。担当者が「通帳で確認」欄にチェックマークを入れたことに対して、疑念を挟み込んでいては業務は進まない。そうした些細なことの積み重ねの上に権限者の融資決裁がある。
スルガ銀行のような例はあまりに極端だが、東日本銀行に業務改善命令を発するきっかけとなった「根拠のない手数料」を徴求するような事例が、他の銀行で行われていないとは言い切れない。だが、「TATERU」の事例に話を戻すと、西京銀行の業務純益率は地銀のランクで概ね中位に位置する程度だ。極端な成果主義が横行していた可能性は低く、「TATERU」の担当者による暴走の可能性もある。これだけ大騒ぎの時期に改ざんに手を染めるということは、慣れていたことなのか、当たり前のことだったのか?
かつて金融庁は強権的な態度で金融検査に臨んできたが、不良債権比率の低下が進み金融システムの安定度が向上したという判断の元に、先月検査局を廃止した。金融庁に検査機能がなくなったわけではないが、お目付け役として銀行に睨みを利かせていた組織が廃止されるのに前後して、個別金融機関の屋台骨を揺るがす不祥事が暴かれつつあるというのは大いなる皮肉である。
銀行にとって、不動産投資に関わる融資の取扱いは非常に神経を使うものになってしまった。銀行員は本来保身的だから案件審査は当然のように厳しくなる。末端の担当者も受付後に想定される上司との煩雑なやり取りを敬遠して、今までのような愛想は見せられなくなる。早急にスルガ銀行の疑惑を清算して仕切り直しをしなければ、廻り廻って日本経済の足を引っ張ることにもなりかねない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)