アマゾンがQRコード決済に参入、キャッシュレス化への動きがさらに加速
2018年9月1日 21:15
キャッシュレス社会へ向けてLINE(ライン)とヤフーが、QRコード決済の手数料を、期限付きの一部条件下で無料にすることを発表してから、俄かにQRコード絡みの動きが激しくなってきた。
【こちらも】キャッシュレス決済はどうすれば増える?推進協議会が始動
既に政府も、計画に沿った決済基盤を提供する事業者に対する補助金支給の検討を始め、中小店舗に対しては決済額にリンクした時限的な税制の優遇策を検討することを決めている。
8月29日、アマゾンが新宿、福岡市などの飲食店・土産物店等数十店舗でQRコード決済を始めたことが伝えられた。アマゾンが自社のリアル店舗以外で決済サービスを展開するのは世界で初めてと伝えられ、日本におけるスマホ決済の本格化に対する期待感の大きさが伺われる。
アマゾンはNIPPON PAY(ニッポンペイ、東京・品川)の決済システムを使う。QRコードをアマゾンの通販サイトアプリで呼び出し、ニッポンペイが店舗に無償でレンタルしたタブレットを使って読取り・決済する。利用希望店舗は12月末までにニッポンペイのタブレット使用を申し込むと、20年末まで手数料はかからない。
3年間手数料無料を謳っているラインやヤフーは、店舗への売上代金支払時に何らかの手数料を求めて、事業モデルを構築するのではないかと見る向きがあった。これに対してアマゾンは、19年には決済の翌日に売上金を店舗の銀行口座に振り込み、店舗の資金繰りを応援する方針だ。ユーザーからの売上代金収納にも、加盟店への売上金交付業務からも手数料の徴収は考えていないようだ。
アマゾンがQRコード決済に参入したことによって、売上代金に応じた手数料を徴収することがますます困難になるかもしれない。QRコードを使った決済事業者の競合が激化するにつれて、将来も売上金から一定割合の手数料を徴収するビジネスモデルの構築は、不可能となる可能性がある。キャッシュレス社会に移行することで、我が世の春を期待していたクレジットカード業界も、今までの様な手数料徴収システムが今後も維持できるのか、大きな懸念を抱き始めた。
今後は、QRコードによる決済データをビックデータとして有効に活用できるビジネスモデルが構築できるかどうかにかかってくる。ユーザーにとっては利便性が向上し、店舗は売上手数料の負担がなくなり、現金管理コストが減少する。社会が現金の保管管理・清算・収納業務から解放されることによって、国家単位では兆円単位の経費削減になると試算されている。ATMが大幅に削減されて、苦境にあえぐ銀行経営に経費削減という恩恵をもたらす可能性もある。既存の事業モデルがリセットされる転換点に差し掛かったのかも知れない。
そう考えると、とにかく取扱件数を増加させること。そのために、手数料を無料にしてユーザーも店舗も使いやすくし、利用店舗を広げることに突き進むしかない。そう感じさせるアマゾンの話題だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)