【決算記事情報】科研製薬は薬価改定や研究開発費増加で19年3月期減収減益予想、1Q減収減益だが進捗率順調

2018年8月31日 13:03

 科研製薬<4521>(東1)は整形外科・皮膚科・外科領域を主力とする医薬品メーカーである。外用爪白癬治療剤クレナフィンの海外への導出や、パイプライン充実を推進している。19年3月期は薬価改定、競合品の影響、研究開発費増加などで減収減益予想である。第1四半期は減収減益だが進捗率は順調だった。

■整形外科・皮膚科・外科領域を主力とする医薬品メーカー

 整形外科・皮膚科・外科領域を主力とする医薬品メーカーで、農業薬品や飼料添加物、不動産賃貸(文京グリーンコート関連賃貸)なども展開している。

 医療用医薬品・医療機器は、生化学工業<4548>からの仕入品である関節機能改善剤アルツ、14年9月国内販売開始した日本初の外用爪白癬治療剤クレナフィンを主力として、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、高脂血症治療剤のリピディル、創傷治癒促進剤のフィブラストスプレー、ジェネリック医薬品も展開している。

 16年12月国内販売開始した歯周組織再生剤「リグロス歯科用液キット」は、組み換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)を有効成分とする世界初の歯周組織再生医薬品である。17年4月から歯周外科手術の経験のある歯科医師全てが使用可能となったため、18年3月期から国内販売を本格化した。

 18年8月には、生化学工業が18年3月製造販売承認取得した腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア椎間板注用1.25単位(一般名コンドリアーゼ)の販売を開始した。国内初となる椎間板内に直接注射する治療剤である。

■パイプライン充実やクレナフィンの導出を推進

 将来を見据えた成長基盤の整備として、パイプラインの充実、クレナフィンおよび新製品の価値最大化、既存製品の営業基盤強化と効率化、創造力豊かな人材の育成に取り組んでいる。

 原発性局所多汗症を適応症とする「BBI-4000」(外用抗コリン剤)(15年3月米ブリッケル・バイオテック社から導入、日本とアジア主要国における独占的開発・販売・製造権)は、第3相臨床試験段階である。

 熱傷焼痂除去剤「KMW-1」(海外での商品名NexoBrid、16年4月イスラエルのメディウンド社から導入、日本における独占的開発・販売権)は、第3相臨床試験を実施中である。熱傷で生じる焼痂と呼ばれる壊死組織を除去する外用酵素製剤である。

 潰瘍性大腸炎を適応症とする「KAG-308」(旭硝子<5201>と共同開発の経口プロスタグランジン製剤)は第2相臨床試験が終了し、今後の方向性について旭硝子と検討中である。

 爪真菌症を適応症とする自社創薬の「KP-607」は第1相臨床試験を実施中である。ポスト・クレナフィンの位置付けである。

 また17年6月スイスのNumab社と、Numab社が有する多重特異性抗体医薬を創製する技術に基づき、炎症性疾患を対象疾患とする新規抗体医薬候補品の創薬を目的とした共同研究契約を締結している。

 クレナフィンの海外への導出では、カナダのBausch Health社(旧バリアント社)が米国・カナダにおいて14年から販売(商品名Jublia)している。

 また、韓国の東亞STが韓国で17年6月販売(商品名Jublia)開始した。17年11月には田辺三菱製薬の子会社である台湾の台田薬品と台湾における独占供給契約を締結した。18年販売開始を目指している。中国では臨床試験申請が当局に受理され、複数の導出候補先と契約交渉中である。香港・マカオでは導出候補先と契約交渉中である。

 リグロスとフィブラストスプレーについても海外展開を進めるべく、新たなパートナーの検討に着手している。また18年2月にはカナダのBausch Health社(旧バリアント社)と、新規化合物KP-470の独占的ライセンス実施許諾契約を締結している。米国、カナダ、欧州において皮膚疾患およびリウマチ性疾患を対象に、KP-470を有効成分とする外用剤を独占的に開発・販売する権利を供与した。

■19年3月期減収減益予想、1Q減収減益だが進捗率順調

 19年3月期連結業績予想は、売上高が18年3月期比3.7%減の948億円、営業利益が18.2%減の225億円、経常利益が18.1%減の228億円、そして純利益が13.9%減の164億円としている。配当予想は18年3月期と同額の年間150円(第2四半期末75円、期末75円)で、18年5月9日公表の予想配当性向は36.9%である。

 第1四半期は、売上高が前年同期比3.3%減の241億35百万円、営業利益が26.2%減の56億47百万円、経常利益が25.6%減の58億17百万円、純利益が26.1%減の40億35百万円だった。

 売上面では、クレナフィンが4.8%増と堅調だったが、薬価改定や競合などの影響でアルツが16.3%減、セプラフィルムが6.0%減、フィブラストスプレーが14.3%減、リピディルが30.1%減、ジェネリック医薬品が10.5%減と低調だった。売上原価率は42.1%でほぼ横ばいだったが、研究開発費が大幅に増加(94.9%増の35億79百万円)して減益だった。

 通期も、クレナフィンは3.2%増、セプラフィルムは0.4%増と堅調推移を見込むが、アルツが薬価改定で12.5%減、リピディルが競合影響で31.1%減、フィブラストスプレーが薬価改定で14.3%減、ジェネリック医薬品が5.0%減の計画である。さらに研究開発費の大幅増加(43.5%増の117億円の計画)で減益予想である。なお通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高25.5%、営業利益25.1%と概ね順調だった。

■株価は年初来安値から反発して調整一巡感

 株価は8月17日の年初来安値5260円から反発して調整一巡感を強めている。8月30日の終値は5630円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS411円18銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間150円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS2824円32銭で算出)は約2.0倍、時価総額は約2727億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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