携帯料金、「4割引き下げ」実現へ向けた動きが本格化?
2018年8月31日 21:36
菅義偉官房長官が21日に札幌市内で行った講演が波紋を広げている。概略、「携帯電話会社間で競争原理が機能していない。大手携帯電話会社が多額の利益を計上していることは問題だ。携帯電話の利用料金を現在よりも4割程引き下げることが可能だ」と述べた。
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携帯電話の加入契約者数は約1.7億件もの数に上り、複数台を保有している人も珍しくない、社会的なインフラと言える存在に上り詰めた。
その携帯電話の利用料金が適正なのかという疑問は従来から論じられている。現在大詰めの段階を迎えているのが、「2年縛り」と「4年縛り」をどう緩和するのかという問題だ。
「2年縛り」は2年間の継続利用を条件として、基本料金を割り引くシステムだ。“割高”な基本料金を割り引いてもらえることから自衛のために加入するユーザーは多い。反面、解約可能な時期が、2年間の契約期間満了後の2カ月間(25カ月~26カ月目)と限定されていて、対象期間以外に解約するとペナルティが課せられる。総務省はこのシステムを捉えて「利用者の自由な選択の機会を阻む」として問題視し、大手3社に違約金や追加料金を求めないで解約に応ずることを求めている。
「4年縛り」は、48回の支払いを組んで携帯を購入した場合に、購入後25カ月目以降の機種変更に際しては、残額の支払いが免除される仕組みを指す。但し支払いが免除されるのは(1)再度4年契約を締結する(2)前の携帯は下取りに出す、ことが条件なのでユーザーの好き嫌いに拘わらず、通信キャリアを変更することは事実上難しくなる。
大手3社は総務省の要請に対して検討中であるが、伝えられるところ「2年縛り」は会社による若干の相違はあるものの、ペナルティなしの解約可能期間を1カ月程延長して3カ月程度にする方向だ。監督官庁の要請にゼロ回答は出来ないから若干期間を緩和した程度だ。
4年縛りに関しては再契約には弾力的な対応となりそうだが、下取り条件の撤廃については反応が鈍い。
契約の速やかな継続が、安定的な売り上げを意味するキャリアと、市場競争の加速によって顧客の流動性を高め、通信料金の引き下げを実現したい行政側とでは、立場が違い過ぎる。2年縛りに限って言うと、毎年1カ月ペナルティを短縮させることを繰り返しても、全廃までには20年という果てしもない期間を要することになる。このまま回答が出るのを待っていると、現在の通話料金が固定化してしまう恐れがあったところに、菅長官の発言が“マッタ”をかけた形になった。
菅長官の発言に対して当初、「4割の根拠が不明。寝耳に水で、基本的に静観する」との大手キャリアの関係者の発言が伝えられていたが、その後「2年縛り」「4年縛り」の取引慣行だけでなく、自社販売のスマホが他の通信会社で使えなくなる「SIMロック」や、端末と通信のセット販売に関しても問題視していることが判明し流れが変わった。
ソフトバンクが29日に発表した新しい携帯料金プランは、携帯の代金と通信料金の分離だ。携帯端末の割引きをしないが通信料金を安くするプランである筈だが、正価に戻る携帯と引下げられた通信料金を合算で考えると代わり映えがしない。まだ、曲折があるということかも知れない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)