管理職の労働時間、企業の把握義務化へ 厚労省

2018年8月29日 11:21

 厚生労働省は労働安全衛生法関連省令を改正し、2019年4月から管理職の労働時間の把握を企業に義務付ける方針を固めた。現在企業に義務付けられている労働時間の把握は一般従業員だけだが、今後は管理職の過重労働を防ぐための対策を企業が講じる必要がありそうだ。

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 今回の改正によって労働時間の把握の対象となる管理職はおよそ140万人にのぼるとされる。管理職は今まで経営者と一体的な立場として残業時間の規制の対象外となってきた。しかし働き方改革関連法案の可決によって一般従業員の残業時間が減ることが予想される中、管理職への負担が増えることを懸念する声は後を絶たない。実際管理職ではあっても、行っている労働は一般従業員とまったく変わらないということもある。働き方改革によって管理職の過重労働が増えることを防ぐため、企業側が労働時間を把握して勤怠管理を行うことが求められた格好だ。

 ただし今回の改正によって浮き彫りになる問題もある。それは「誰が管理職なのか」というものだ。08年には「名ばかり管理職」という問題が生じたように、役職は管理職であっても実態はないというケースもありうる。一般的には課長以上が管理職とされることが多いが、今回の改正によって企業に勤務するすべての労働者が勤怠管理の対象になるかどうかは不透明だ。一般従業員でも管理職でもないと判断される社員がいないとも限らない。

加えて労働時間の管理によって過重労働が解消されるかどうかも定かではない。もちろん労働時間の管理により時間外労働などが1ヶ月あたり80時間を超える従業員からの申し出で行われる医師による面接指導はより正確に行われるようになるだろう。メンタル面のケアや健康診断も企業が積極的に行う原動力にもなりうる。しかしそれがすなわち残業の抑制になるかどうかは別の問題となる。過重労働による業務効率の低下などを防ぐためにも、管理職の労働時間の管理だけでなく残業抑制の実際的な対策が必要になるだろう。(編集担当:久保田雄城)

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