【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆中国情勢が一服、秋睨む攻防へ◆

2018年8月26日 09:40


*09:40JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆中国情勢が一服、秋睨む攻防へ◆
〇売り方攻勢も崩し切れず、秋睨む攻防へ〇
先週の日経平均は440円安で始まった(10日の300円安と合計740円安)が、概ね2万2000円台をキープした。売り材料となったトルコ・リラの暴落は、ある程度予想された(大統領選でのバラマキ政策、新興国不安など)事態で、これだけでは売り崩せなかった印象だ。売り方が期待したであろう中国不安に材料が出なかったことも影響したと考えられる。

ただし、いわゆる夏枯れ相場の下、個別銘柄ではジリ安が多く、全市場ベースで新高値数十銘柄に対し、新安値数百銘柄(比較的落ち着いた17日でも新高値31、新安値179)と地合いは悪かった。東証空売り比率(週間平均)は7月下旬の41.64%から8月は43.14%→43.66%→先週は45.1%に跳ね上がった。
今年前半の人気テーマだった「半導体関連」、「IoT・FA関連」、「フィンテック関連」などに続き、「インバウンド関連」などが崩れ、テンセント・ショック(ゲーム関連)が加わった。個別材料しか買い材料が見当たらない状況にある。

焦点となった中国・北戴河会議は全く情報が出なかった。封じ込めに成功した点では、習近平主席の成功と思われるが、途中、習主席に近いとされる仏教界会長のセクハラスキャンダルが報じられ、会合の終わりを告げた政治局常務委員会(16日開催と報道)で、不正ワクチン問題での40人処分を決めたことなどから類推すると、習主席が圧倒したとは言えず、何等かの妥協が図られた公算がある。

同じ16日に中国商務省が米中貿易協議再開を発表(WSJ紙は22-23日と伝えている)、習主席が9月にロシア、北朝鮮を訪問するとの観測が伝えられ、17日WSJ紙が「11月に米中首脳会談の可能性」を報じた。7月の固定資産投資計画(インフラ投資)は前月比ほぼ4倍と景気テコ入れに注力、15日に一時1ドル=6.9人民元台に落ち込んだが7元台突入回避の観測が出ていることなどから、目先は延命優先の状況と思われる。ただし、17日の上海総合指数は5日続落し、2年7ヵ月ぶり安値に沈んでおり、底割れ回避できるか神経質な展開になろう。

例年だと、秋相場への橋渡し的役割で、23日からのカンザスシティー連銀主催ジャクソンホール会合が注目されるが、今のところ米利上げシナリオが揺らいでおらず、中国情勢、新興国不安(トルコに続いて狙われる候補に、独ロ首脳会談でのバルト海パイプライン合意による影響でウクライナ懸念、新政権不安でパキスタンなどが挙がっている)に関心が強い状況が続くと思われる。

NYダウと日経平均の絶対値差は3399ポイントに拡大している。NYダウが2万6000ドル台回復を視野に入れる状況にあり、日本株の出遅れ感が強まる可能性がある。市場参加者の回復で、売られ過ぎ銘柄探しに転換できるかどうかが焦点と考えられる。
なお、日銀のETF購入ペースダウン(8月2回(各703億円)、7月3回(各705億円)、6月10回(各703億円)、5月8回(各720億円))が話題だが、購入条件の変動率を変えた可能性が考えられる。購入額減額に向かうのか、将来の危機に備えるためか、判断は時期尚早と思われる。

以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/20号)《CS》

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