島の移住者が駆除動物の食肉処理・加工施設をオープン 長崎県五島列島で
2018年8月21日 10:27
シカやイノシシによる農作物被害が問題となっている長崎県五島列島で、駆除した野生動物(ジビエ)を食肉として処理・加工する施設を島の移住者らが開設。9月2日にオープンする。施設では、駆除した野生動物を引き取り食肉として販売するほか、今後、加工食品の製造も計画しているという。
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食肉施設を開設したのは、同県五島市の永田義次さん。永田さんは長崎市の出身で、約40年間、東京で暮らした後、妻を亡くしたのを機に「余生をのんびり過ごそう」と五島市に移住したという。
五島列島では、野生のイノシシやシカによる農作物被害が問題になっており、特にイノシシは海を泳いで島を渡るため、どこに現れるか予測がつきにくく、毎年、多額の被害が出ているという。このため、島では猟銃やワナなどを使った駆除を行っているが、駆除した動物は焼却処分するしかなかった。
こうした実情を知った永田さんは、市内の友人らと「ジビエ加工施設を作れば、焼却する動物も減り、廃棄処理問題が解決できる」と五島ジビエ合同会社を設立。国境離島新法に基づく雇用機会拡充事業にも採択され、補助金を受けて五島列島福江島にある廃校となった小学校分校校舎を処理施設に改修した。
同社は今年6月、保健所から食肉処理と販売の営業許可を取得。その後、市や狩猟者から駆除した野生動物の提供を受けて、社員らが解体技術の習熟に努め、一定の水準に達したことから本格的に事業を始めることになった。
五島列島は長崎市の西約100キロにあり、11の有人島と52の無人島で構成されている。五島市は列島の一部で、人口約3万7千人。島では住民の高齢化によって野生動物の駆除を行う人が減ったこともあって、イノシシやシカによる農作物被害が深刻になっている。このため、同市では島に赤外線センサーを設置し、動物を感知するとメールで猟師に通知したり、地図上に表示したりするシステムを導入して効果を上げているが、一方で動物の駆除数が増えることで処分方法が課題となっていた。同市は、ジビエの食肉事業が軌道に載れば、農作物被害への対策や地元経済の振興につながるのではと期待を寄せている。