幻の哺乳類パレオパラドキシアの化石、筑波大学の標本庫で発見

2018年8月20日 08:10

 筑波大学の収蔵庫から、一組の化石骨が木箱に入れられた状態で見つかった。60年以上も忘れ去られたまま放置されていたこの骨は、かつては恐竜の骨だと考えられていたが、実際には謎に包まれた古代の哺乳類パレオパラドキシアのものだということが明らかにされた。

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 当該の化石骨は、60年以上前に東京教育大学から鑑定を委託されたものであったらしい。別の哺乳類の化石であると誤認されて、そのまま忘れ去れていたのだが、たまたま筑波大学の研究員が収蔵庫を訪れてこの骨を発見し、その後詳細な調査が行われた。

 残されていたわずかなメモなどを手掛かりに聞き込み調査などを行ったところ、当該の化石は福島県土湯温泉町で、ダムの工事中に大量に発掘された骨の一部であったという。現地には「恐竜の骨である」と一般には理解された状態で大量に保管されていたのだが、1954年に発生した大火災により、そのほぼすべては失われていた。だが、そのわずかばかりの残存物が、筑波大学で見つかったというわけである。

 さて、骨は大腿骨であった。詳しく鑑定したところ、化石はパレオパラドキシアという古代の絶滅種の右大腿骨であることが明らかになった。部分的には破損があるものの、筋肉の付着面も観察できるなど化石としては状態は良好で、絶滅種の古生態を知るうえで貴重な史料であるという。

 なお、化石に付着していた岩からジルコンという鉱物を抽出して、ウラン・鉛年代測定法で分析を行ったところ、この化石は1,600万年前よりも新しい時代のものであることも分かった。パレオパラドキシアは、約2,300万年前から約1,000万年前、北太平洋沿岸地域に暮らしていた哺乳類であり、束柱類という、グループ自体が絶滅しているグループに属する種である。その名前は、「謎めいた古生物」という意味になる。

 なお、一連の再発見に関する論文はRoyal Society Open Scienceに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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