東工大、植物の眠りの仕組みを解明
2018年8月19日 10:13
植物にも眠りがある、ということを知っていただろうか。具体的には、夜間になると光合成に関わる酵素がオフになるということである。この機構を、東京工業大学の科学技術創成研究院化学生命科学研究所の吉田啓亮助教と久堀徹教授らの研究チームが解明したという。
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植物の眠り、すなわちタンパク質分子の酸化と還元の切替機構である「レドックス制御」、つまり「植物が目覚める」機構についてはかなり古くから知られていた。だが、夜になってこの制御系がどのようにオフになるのか、という点については久しく未解明だったのである。
そもそも植物の光合成は地球規模の大規模かつ壮大なエネルギー変換反応の総体である。光合成は酸素を供給し、そして炭水化物を生産する。これがなければ生態系と言うもの自体が成り立たない。
さて、植物の緑葉の細胞には、葉緑体と呼ばれる長径3~10μmほどの細胞小器官があり、光合成反応はこの小器官の中で行われている。葉緑体の内部には、チラコイド膜と呼ばれる袋状の閉じた生体膜が積層している。
レドックス制御システムは、特定の酵素タンパク質が持っているジスルフィド結合の酸化・還元を生体内の酸化還元状態に応じて制御する分子機構だ。この制御機構において、チオレドキシンという酸化還元タンパク質が重要な役割を果たしている。還元状態のチオレドキシンは、標的酵素のスイッチを入れる性質を持つ。葉緑体においては、電子伝達反応で得られた電子をチオレドキシンが受け取ることでレドックス制御システムが作動する。
チオレドキシンの活性部位には、今回の研究グループによってTrxL2と命名されたタンパク質がある。このタンパク質が反応することで植物の中で働き、植物の眠りを生じさせているというのが今回の研究で確認されたことの主眼である。
なお研究の詳細は、米国科学アカデミー紀要に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)