宇宙エレベーター実現に向けての実験 福島で実施
2018年8月18日 20:24
宇宙エレベーター協会は14日、福島県南相馬市のロボットテストフィールドにて、クライマーから高機動ロボットを落下させる実験を実施した。世界初の実験に成功し、宇宙エレベーターの実現に一歩近づいた。
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高度約100メートルにバルーンを設置し、「クライマー」と呼ばれる昇降機を使って四本足の高機動ロボットを乗せて上昇させた。パラシュートを搭載したロボットを落下させ、軟着陸に成功。
「宇宙エレベーター」とは、地上と宇宙とをエレベーターで接続する新しい輸送機関だ。宇宙開発には欠かせないロケットには墜落や爆発の危険が伴うが、宇宙エレベーターにはその危険がない。また大気が汚染されないことから、その実現が期待されている。
宇宙エレベーターの仕組みを簡単に説明すると次のようになる。赤道から高度約3万6,000キロメートルの円軌道は「静止軌道」と呼ばれ、地球の自転周期と同じ周期で公転するため、地上からは止まっているように映る。静止軌道上の人工衛星から上下にケーブルを伸ばすことでバランスをとり、ケーブルに備えつけた昇降機で地上まで降りるのだという。
宇宙エレベーターが注目を浴びたのは、2000年に米国航空宇宙局(NASA)の依頼でブラッドリー・エドワード博士が研究を開始し、その建設が可能であるという結論を出したことが発端である。十分な軽さと強度をもった材料が開発されれば実現可能であるという条件つきであるものの、衝撃的な内容である。
この結果をもとに、米国Liftport社などの宇宙エレベーターの建設を目的とした会社が設立された。日本でも大林組が宇宙エレベーターの開発に着手し、2012年2月にその構想が公開された。
宇宙エレベーターの実現には、困難も多い。そのひとつが、エドワード博士によって指摘された、十分な軽さと強度をもった材料の開発である。しかしこの条件を満たす素材として、1991年に「カーボンナノチューブ」が発見されている。
宇宙エレベーター協会による今回の実験も、宇宙エレベーター実現の一環として実施されている。宇宙エレベーターの実現時期だが、大林組によると2050年の完成を目標に、建設を構想をしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)