あるCEOが語った「若い社員への“違和感”」への違和感
2018年8月17日 17:17
あるニュースサイトに掲載された、某有名企業CEOの語る仕事論がちょっと話題になっています。
「若い社員への"違和感"」のタイトルは、後に「部下は上司から、上司は部下から学びなさい」と変更されていますが、この内容がツイッターなどで数多くの違和感を示されたのです。
「突っ込みどころしかない」「見事な時代遅れ」「まさに老害」など、結構手厳しいものでした。
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記事の見出しや転載されていた内容が、あまりに典型的な「今どきの若者批判」だったので、それを見たときには私も「これでは言われても当然」と思いました。6、7年前なら、理解できる部分もありますが、今となってはあまりにも時代遅れな感性です。
ただ、もしかすると取り上げられている内容とはニュアンスにギャップがあるのではないか、現状を分かっていながら、あえてアナログの大切さを説いているのではないか、何か裏で考えていることがあるのではないかなどと思い、掲載記事は全文を読んでみました。
その上での私の感想は、はじめに思ったことと結局ほとんど変わらず、世代間ギャップに対する違和感の列挙、若い世代の仕事ぶり批判としか感じられませんでした。
若い人たちは、「喜怒哀楽をあまり外に出さないように見える」「マイホームやマイカーなど、我々の世代が持っていた欲望もあまり持たず」だそうですが、感情の起伏を見せることがなぜ良いのかわかりませんし、よけいな物欲などはあってもなくても構いません。上昇志向至上主義の時代ではありません。
特に違和感が拭えなかったのは、IT活用のスタンスについて語られている部分で、このスタンスが自分の世代と違い、特にメールの使い方について、「一方通行なので表現によっては人を傷つけていることがあってもわからないし、人間関係が希薄化することにもなりかねない」「メールによって職場が殺風景で機械的になっていることに、危機感を感じていない」とされていました。
確かに、直接相手の表情を見ながらコミュニケーションするのが大事なことに異論はありませんが、今の若者はそのあたりをわきまえていて、メール以外のコミュニケーションツールを含めて、それぞれの使い勝手の特徴に合わせて使い分けています。
中には直接言いにくいからといってラインだけで済まそうとするなど、あまり良くないケースもあるようですが、仕事の上では期限、相手の状況、情報共有する範囲、記録として残す必要性の有無など、状況を総合判断して、直接の会話、電話、メール、メッセンジャー、ライン、ショートメッセージ、スカイプ、その他チャットツールなどを使い分けます。少なくとも「会話」「電話」「メール」の三択ではありません。
他にも、組織内のエスカレーションのルールを守れというような話があり、それは確かに基本ではありますが、あまりに話が通じない上司がいたとすれば、その人を飛ばして話をせざるを得なくなるので、これもあくまで程度問題でしょう。
私が一番気になるのは、この古い感覚が見え隠れするトップメッセージが、メディアを通じて記事になるにあたって、周りの関係者たちはどんな状況だったのだろうかということです。
もしかすると事前に共有される機会はなかったのかもしれませんが、このCEOの話に多くの人が賛同していて異論がなかったとすれば、企業内の価値観が世間一般とは少しずれた、組織の閉塞性を心配します。
また、もしも異論はあったが言わなかったのだとすれば、上意下達、封建的な企業体質の可能性があるので、組織内のコミュニケーションとして問題です。「職場が殺風景で機械的」という原因は、実はこちらにあるのかもしれません。
一般には通じない社内用語のローカルルールがあるという話も、コミュニケーションの問題というより、閉鎖的な企業文化の問題という感じがしてしまいます。
この記事に書かれていることは、一般論として理解できることもたくさん含まれていますが、大企業トップの発信としては、ずいぶん主観的で視野が狭い感じがしてしまいます。企業文化というのは、こんな些細なところから見えてくるものですが、実際はどうなのでしょうか。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。