JAXAらが共同開発した風観測システム 欠航率減少への貢献が期待
2018年8月10日 19:42
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10日、低層風情報提供システム(SOLWIN)を鳥取砂丘コナン空港で披露したことを報告した。8月1日から1年間にわたって、SOLMINの実証実験が実施される。ソニックと共同で開発したSOLWINの導入により、空港での航空機離着陸時の風の状況を把握でき、欠航率が減少することが期待される。
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SOLWINは、「ドップラーソーダ―」と呼ばれる音波を活用して風速を観測するため、悪天候に左右されることはない。そのため、環境の厳しい空港での運用が期待される。今回実証実験が実施される鳥取砂丘コナン空港は、日本海から吹く風の影響が大きいだけでなく、冬には降雪もある環境の厳しい場所だ。鳥取砂丘コナン空港での実証運用を通じて、SOLMINの完成度が上がり、実用化に繋がるものとみられる。
SOLWINのような低層で生じる風速を観測する装置が必要とされるのは、航空機の後方で発生する「後方乱気流」が原因だ。通常、後方乱気流の影響を避けるために、大型航空機の場合は2分ほどあけて離着陸を行なう。そのため、航空輸送量の増大を妨げる要因となる。
実際の後方乱気流は風の影響で減衰するために、2分待つ必要はない。SOLWINのようなシステムがあれば、航空機の離着陸の間隔を短くすることが可能だ。
今回のSOLWINの開発には、JAXAによる「LOTAS」と呼ばれる低層風攪乱アドバイザリーシステムという技術が応用されている。LOTASにより、従来よりも安価に風の攪乱の状況や10分後の予測データを伝えることができるという。
LOTASを応用したサービスとして、航空機の着陸経路上での風情報を伝える「ALWIN」が知られている。地上に設置されたドップラーレーダーからの観測データにより、建物や地形の影響による乱気流を検出し、航空機や運航会社に送信するシステムだ。ALWINは、すでに2017年4月より羽田空港や成田空港で実運用が開始されている。
ALWINのようなLOTASを応用した風情報提供システムは高価なため、大型空港で可能な運用を、地方空港で実施するのは難しい。ソニックは今回、JAXAと共同開発というかたちをとることで、風情報提供システムのコストダウンに成功した。
SOLWINは2017年3月から1年間、大分空港での実証評価を実施している。鳥取砂丘コナン空港での実証実験の後、2019年度からの実運用をソニックは目指すとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)