観測衛星「しきさい」から見た、猛暑の日本列島と海水温の上昇
2018年8月9日 14:59
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」が1日に撮影した画像が話題になっている。JAXAが公開した画像は、サーモグラフィーで日本列島を撮影したものだ。
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1日の午前10時40分頃に撮影されたその画像は、地表1.5mと人の顔あたりの温度を紫外線で測るセンサーによって計測された。午前中であるにもかかわらず、埼玉県熊谷市や京都府京都市では50度を超えている場所もあった。
しきさいは地表の温度を計測できるだけではなく、海水温の計測もできる。1日の夜に撮影された画像で、日本列島を取り囲む海の水温が例年よりも高いことが判明したのだ。
特に日本海側の海水温上昇は長期的に続くのではといわれており、それにより東北地方では、積雪量の予測が難しくなったり、漁場が変わる可能性がある。
しきさいは、2017年12月に初めて宇宙へ飛び立ち、2018年3月に観測を始めた。それから約4カ月の間、2日間かけて地球を一周し、データをJAXAへと送信する作業を繰り返している。
しきさいは人の目に見える光の波長「可視化」や、観測対象から放たれる熱を測ることができる「熱赤外」、大気の中の小さなチリ(エアロゾル)をとらえ黄砂などが計測可能な「近紫外」の領域まで観測することができる。
そのため、地表温度や気温、水温を計測できる他、植物の分布図を画像に示すことや、プランクトンの濃淡を観測することも可能だ。
2018年12月に本格的なデータ運用を開始する予定で、8月3日には漁業情報サービスセンター(JAFIC)に、しきさいの観測データを共有することが発表された。JAFICは、1970年代から衛星データを活用して漁業や水産研究を行なっており、しきさいの本格データ運用開始までにサービスを確立させる方針だという。
これまでJAFICは、しきさいのデータを解析し、スルメイカの記録的不良に伴いマイワシが好漁であることを発見した。こうした漁獲量の変化は、海洋環境の変化によって魚種ごとの漁獲高が大きく変化する「レジームシフト(魚種交替)」現象に関連するのではないかといわれている。しきさいのデータを解析することによって、それらの現象を解明することができると期待されている。(記事:中川リナ・記事一覧を見る)