NCNP、自閉症スペクトラムの聴覚過敏性と活動動態との関連性を明らかに
2018年8月9日 13:14
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は6日、東大の身体教育コースと共同で、自閉症スペクトラムや定型発達の児童の神経生理学的な聴覚過敏性と、時計型のウエアラブル身体加速度計で評価した日常生活の身体活動動態との関連を明らかにしたと発表した。
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自閉症スペクトラムは発達障害の一つで、生後まもない幼少時期より社会的コミュニケーションなどに課題がある障害だ。自閉症は多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる生まれつきの脳機能障害で、症状が軽い人たちまで含めると約100人に1~2人いると言う。自閉症スペクトラムの人々の状態像は非常に多様で、個々のニーズに合った適切な療育・教育的支援につなげていくことが求められている。
自閉症スペクトラムを持つ児童が非定型的な感覚処理特性を持つことは、古くから知られている。最近米国精神医学会の自閉症スペクトラムの診断基準に、この感覚処理特性を含めるほどに、重要性が認識されている。非定型的な感覚処理特性は、聴覚、視覚、味覚、嗅覚、触覚など様々な感覚でみられるが、聴覚過敏・鈍麻は最も多くみられる特性の一つだと言う。
聴覚過敏があると、掃除機の音や犬の鳴き声、ドライヤーの音といった強い音に泣いたり隠れたりといった拒否反応を示すことがある。加えて、周りが騒々しいと気が散ったりうまく活動できないということがあり、聴覚鈍麻の場合には話しかけても聞いていないようだったりする。
今回の発表は、聴覚過敏性と日常生活における身体活動動態を、それぞれ聴覚瞬目反射検査法と、日常的に計測可能なウエアラブル身体加速度計(アクチグラフ)で評価し、相関性を見出した。聴覚過敏性や日常生活における身体活動動態を簡便に定量的・客観的に調べることで、自閉症スペクトラムの病態解明や支援法の開発につながると期待される。
●自閉症スペクトラムへの新たな支援に期待
日常生活で感覚処理特性を評価することは容易ではない。それは、周りの人だけでなく、自閉症スペクトラム本人でさえ気づいていない場合が多いからだと言う。
自閉症スペクトラムの児童14名と定型発達の児童13名が、本研究に参加。65~105デシベルの強さの音に対する聴覚性瞬目反射について、従来の手法と時計型のアクチグラフ(図2)を検討。自閉症スペクトラムを持つ児童は、特定デシベルの音刺激に対して聴覚性瞬目反射が増大。特に弱い音に対する聴覚過敏性が、アクチグラフで評価した覚醒時の高い活動性と散発的な大きな活動低下という日常生活の身体活動動態の特徴と相関がある。
アクチグラフによって、行動動態に関するデータを取得。今後基礎的・臨床的な知見が蓄積され、聴覚過敏性や併存する精神障害に関わる生物学的メカニズムが解明できれば、自閉症スペクトラムの新たな支援法の開発につながることが期待される。(記事:小池豊・記事一覧を見る)