賃上げ率、2018春は2.26%で3年ぶりの前年比プラス

2018年8月7日 10:35

 政府統計によれば名目賃金は上昇傾向で推移しているものの、日銀のインフレ加速政策の下で賃金上昇が物価上昇に十分追い付いて行かず実質レベルでは賃金が上がらない状況が続いている。

【こちらも】世帯所得24年ぶり高水準に 賃上げ効果か

 政府はこうした状況下で民間経済団体に直接賃上げを働きかけるなど、労使の賃金交渉は官製春闘などと呼ばれる状態にある。官製春闘の是非はともかくも、2014年以降賃上げ率は2%台に乗り、政府の対応はそれなりの効果を発揮しているようだ。

 2018年春の春闘実績については厚生労働省が今月3日、「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」を公表している。この調査の対象は定期昇給込みの賃上げ額など妥結額を把握できた資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の労働組合のある企業334社だ。

 報告書によれば、今年の春闘の平均妥結額は7033円で前年の6570円に比べて463円増加し、交渉前の平均賃金である現行ベースに対する賃上げ率は2.26%で、前年の2.11%に比べ0.15ポイントのプラスとなった。前年比がプラスとなったのは3年ぶりとなる。

 業種別に賃上げ率を見ると、運輸で昨年の妥結額6039円から本年の1万004円に大幅に増加し、賃上げ率は3.32%と3%台に乗り、昨年の賃上げ率2.02%から実に1.3ポイント上昇の高い伸びとなっている。次いで賃上げ率が高いのが精密機器で、妥結額は7876円で賃上げ率は2.59%、昨年の賃上げ率が1.75%から0.84ポイント増加している。求人倍率が極めて高い状態にある建設では、妥結額は8370円で賃上げ率は2.41%で、これも昨年の賃上げ率2.24%を上回る結果となった。

 賃上げ率が高いところ、また賃上げ率の前年比が大きいところを見ると運輸、精密機器、建設、自動車など現在の景気回復の中で人手不足感が高まっている業種が目立っているようにも見える。高い賃上げの背景には、単に官製春闘の効果だけでなく人手不足の状況下で離職防止などにも配慮した賃上げなどもあるのではないだろうか。

 春闘参加企業で見る限り賃金は良好に推移していると言えるが、マクロ賃金統計では賃金は物価上昇に十分追い付いていない状況だ。賃金は景況の遅行指数だが先行きを示すマクロ指標の中には一服感を示すものも出始めている。今後の動向にも注意が必要だ。(編集担当:久保田雄城)

関連記事

最新記事