【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆FOMC、無風で通過◆

2018年8月5日 10:05


*10:05JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆FOMC、無風で通過◆
〇米金利シナリオ変わらず、対中関税策が重石〇
第二関門の米FOMCは波乱なく通過した。今回は金利を据え置くとともに、米経済は力強いとの見解を示した。年内あと2回の利上げ方針にあり、短期金利先物市場での利上げ確率は9月91%、12月71%。米債市場では10年債利回りが上昇、6月13日以来となる3%乗せとなった(一時3.016%)。FOMCより、日本国債利回り上昇が影響したと解説されている。

逆に、株式相場の重石となったのは、米政府が2000億ドル規模の中国製品輸入に10%の関税としていたものを25%に引き上げる方針を発表したこと。前日は、中国との貿易交渉を再開するとの観測で緊迫感が緩んだが、揺り戻しの格好となった。水面下の交渉が思わしくないのか、中国が交渉再開に色良い返事をしていないのか、憶測され易い。習政権が北戴河会議を乗り切るまで、大きな動きは出難いと見て置きたい。

米中交渉もあるが、現実的な高関税政策の影響を見て行く段階にも入りつつある。昨日の東京市場で、鉄鋼株が+4.69%と珍しく値上がりトップとなった。一昨日に4-6月決算を発表したJFEHD(5411)が、41%経常増益、通期経常益上方修正(2200→2600億円)、未定だった配当を15円増の95円配と発表したことが好感され、株価が10.37%急伸したことが牽引した(余談だが、日経平均寄与度は+0.87円、鉄鋼株の全体への影響力は小さくなったものだ)。

世界最大手のアルセロール・ミタルも純利益で41%増益を発表。
今年の世界鉄鋼消費が3%伸びる(従来は2.5%)と強気の姿勢を示した。鉄鋼・アルミは最も早くに高関税がスタートしたが、安価な輸入品が締め出され、北米と欧州を中心に平均販売価格が大きく上昇していることが要因となっている。

アジアは若干出遅れるのかも知れないが、「保護貿易」の影響が表れる一つのパターンとなる可能性がある。行き過ぎたグローバル化の修正で、輸入が制限されれば、物価上昇や金利観にも影響してくる可能性を示唆すると思われる。
資源・商品大手グレンコアが上期の銅生産が8%増になったと発表。コバルト31%増、ニッケル21%増なども目立つ。反面、鉛5%、石炭1%、通年見通しを引き下げた。需要の好不調で価格変動が大きくなると想定される。

これも余談だが、熱波は世界的。35-36度辺りではニュースにならないが、ソウル39度、欧州ではドイツで河川の水位が低下し、船舶が航行できなくなっている(エルベ川で水位49cm、ライン川も危機的とされる)。世界的に、設備投資のなかで、水不足を含む暑さ対策投資が大きくなってくるかも知れない。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/2号)《CS》

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