【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆日銀の思惑◆
2018年8月5日 09:50
*09:50JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆日銀の思惑◆
〇緩和策の持続性図り、混乱回避姿勢〇
泰山鳴動して鼠一匹の観があった日銀の金融政策変更だった。緩和姿勢そのものは変わらないので、テクニカルな調整を検討しても、あまり意味がないと思うが、何故この時期に動いたか、連想してみた。
1)緩和副作用=債券村の不満が溜まって来たので、ガス抜きをした→長期金利0.1%程度から0.2%程度に変動幅を拡大して、ディーリングの機会を与えた。
2)物価目標がなかなか実現できず、緩和策長期化へ持続性を高めた。31日の内閣府の7月消費動向調査でも消費者態度指数は2ヵ月連続悪化、基調判断は「弱含んでいる」を据え置いた。日銀はネット通販拡大の影響など、様々分析を行ってきたが説明し切れずにいる。欧米に追随して、出口議論を始めても良いが、物価目標へもう一度腹を括り直した。
3)日銀政策の最も大きな効果は為替の安定。米国が利上げシナリオを進める限り、基調変化は生じないと思われるが、8月9日開始予定となった日米新通商協議で、サプライズを伴う米国の万が一の要求に備え、金融緩和演出の糊代を確保しようとした。
4)米中交渉再開の観測が流れているが、早晩、米国の要求は中国の資本自由化・為替自由化に向かう公算が大きい。体制崩壊に繋がる自由化を中国が飲むかどうか分からないが、人民元安の思惑が強まる。中国としても、人民元安で高関税ショックをカバーしたいところであろう。1ドル=7人民元の憶測(現在は6.83-6.84元水準)も出始めている。糊代確保の狙いは人民元を睨んでのもの。
31日、中国共産党は党政治局会議を開催。対米摩擦圧力を受け、財政出動を決めた。過剰債務問題などでの構造改革を進めてきた習近平主席としては、景気対策の必要性を主張する国務院に譲歩した格好。北戴河会議を前に、習批判の強まりを避ける狙いがあるものと思われる。産経新聞によると、31日には党幹部専用ビーチ沿いの道路は封鎖され、車の往来が激しくなっているようだ。街中の看板は「習近平による」との表現を省略していると言う。イデオロギー・宣伝部門トップの王コネイ政治局常務委員は姿を消したままで、米中貿易摩擦を激化させた責任を取らされるとの憶測も流れているようだ。
日銀が中国動向を何処まで重視しているか、傍証はないが、15年夏のチャイナ・ショックは影響を与えた可能性は高い。少なくとも、政策判断の念頭には、中国情勢が影響しているものと考えられる。市場も中国の動向を引き続き注視していくことになろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/1号)《CS》