名古屋工業大、産業廃棄物のフロンガスを有用物質に変換するプロセスを開発

2018年8月5日 19:44

 名古屋工業大学の柴田哲男教授らのグループは、現状では産業廃棄物としてのみ扱われているフロンガスから、医薬品などの材料となるフッ素有機化合物を作り出す新しい製造プロセスを開発したと発表した。

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 フッ素を含む有機化合物は現在の人類の日常生活に幅広く活用されている。たとえば、パソコンや携帯電話などの液晶。フライパンなどに使われているテフロン加工品。農作物の育成に欠かせない農薬や殺虫剤。血中コレステロールを下げるための薬品や、抗うつ薬、抗がん剤。エイズ治療薬などにも使われるし、人工血管や人工血液の製造にも必要である。

 そういった次第であるから、フッ素化合物を効率よくつくる合成方法はさまざまに研究されている。フッ素を含んだ有機化合物は天然資源としては地球上にほとんど存在しないため、植物や化石燃料から取り出すというわけにはいかない。したがって、完全に人工物から製造するというのが主流なのだが、大きなコストがかかるというのが難点である。

 さて、柴田教授らがこの問題を解決するために着目したのが、産業廃棄物のフルオロホルムだ。フルオロホルムはトリフルオロメタンとも、フロン23とも呼ばれるフロンガスの一種である。フロンガスと言うとオゾン層破壊で有名であるが、このフロン23のオゾン層破壊係数はゼロで、毒性もない。蛍石から取り出す佛山からテフロンなどを製造する際に、年間2万トンほど産出されている。

 だが、このままでは極めて不安定であるため取扱いは難しかった。オゾン層を破壊はしないが温暖化物質であるので、放出は規制されている。

 今回の研究では、このフロン23をジグリムと呼ばれる汎用ポリエーテル系溶媒中で安価なカリウム塩基と処理することで、有用物質に変換できるということが明らかになった。

 この研究は、長年廃棄物でしかなかったフロン23の存在価値に革命をもたらすものであると期待される。なお、研究の詳細は、Scientific Reportsで発表されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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