世帯所得24年ぶり高水準に 賃上げ効果か
2018年8月4日 12:11
厚生労働省が発表した2017年国民生活基礎調査によると、16年の世帯所得は560万2千円となった。これは前年の15年と比べて2.7パーセントの増加で、景気回復の兆しが見えている証拠と言えそうだ。また高齢者世帯の所得は3.4パーセント増加し318万6千円となり、企業が人材不足を補うために高齢者を積極的に採用している結果となっている。
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16年の世帯所得の伸び率の高さは実に24年ぶりのことであり、賃上げの効果、アベノミクスによる財政政策の効果、人材不足対策のための積極雇用など複数の要素が関係していると言えるだろう。実際17年には中小企業全体の82パーセント、18年は85.6パーセントが賃上げを実施した。子育て世代の働く女性も7割を超えたという調査結果もあることを考えれば、今後も世帯所得が増加する傾向は続きそうだ。もちろん世帯所得が増加すること自体は喜ばしいことだが、単純にそういえない事情も隠されている。
世帯所得の増加によって多くの家庭が恩恵を受けているのかというと、そうでもない事実が浮かび上がってくる。実際多くのインターネット掲示板などでは、世帯所得が上がっても景気回復の実感がわかないという声が少なくない。これは世帯所得という指標を年齢別にすると理由が理解できる。もっとも世帯所得が多いのは世帯主が50代の時で平均よりも200万円ほど高い所得を得ている。一方で世帯主が29歳以下の家庭では平均よりも200万円ほど低くなっている。つまり全体として世帯所得は増えているものの、これら二つの世代の間には400万円もの格差があるということになる。特に若い世代は賃上げや財政政策の効果を実感しにくい立場にあり、インターネットの掲示板等でそうした不満が聞かれるのだろう。
今後も世帯所得が増加し、若い世代も景気の回復を実感できるようにしていく必要があるだろう。最低賃金の底上げや軽減税率、年齢による控除の充実などがその一例だ。子育て世代の世帯所得の増加、負担の軽減が実現できれば人口減や人材不足など別の問題にも解決の糸口が見つかるようになるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)