キャッシュレス環境、大変革の兆し? LINEとヤフーが決済手数料競って無料 (前編)
2018年8月3日 19:29
日本は、キャッシュレス決済の選択肢が多彩だ。各種クレジットカードや、銀行口座から代金を引き落とすデビットカード、「Suica」「QUICPay」」「nanaco」「WAON」「iD」「楽天Edy」「nanaco」「WAON」といった非接触式電子マネー、「Tポイント」「Ponta」等のポイントサービスもあり、サービスの多様性では世界一と言っても過言ではないかもしれない。
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ところが、キャッシュレス決済の比率は、韓国が90%と断トツで、中国も60%であるのに、日本はせいぜい20%程度である。日本銀行券に対する信頼が篤く、ニセ札を掴まされる恐れもほとんどない。ATM網が全国に張り巡らされ、現金利用環境が充実している。逆に見ると、年間2兆円と言われる現金管理コストを費消する高コスト社会となっていた。そんな危機感から、キャッシュレス率向上への動きが本格化してきた。
アマゾンジャパン(東京・目黒)は通販サイトで利用されているクレジットカード決済サービス「アマゾンペイ」をリアル店舗にも展開する。消費者がQRコードをスマホに表示し、店舗側は専用タブレットで読み取って決済する。クレジットカードのネックだったカード提示と署名が必要なくなる。このサービスの実証実験は決済サービスのNIPPON PAY(ニッポンペイ、東京・品川)が福岡で8月に行う。ニッポンペイが福岡の飲食店や個人経営等100~200店舗にタブレットを配布。キャッシュレスが進む中国の「支付宝(アリペイ)」などにも対応する。日本で9割前後と圧倒的な数の中小零細の店舗が本格的にキャッシュレス決済を始めると、社会の景色は大きく変わる。
6月28日、LINEは中小企業のショップや飲食店などの決済手数料を8月から3年間、無料にすることを発表した。経営者のスマホにインストールしておけば決済端末になる専用アプリを配信し、このアプリを使って決済した場合には手数料が無料になるという。読み取りのための新たな機器や初期投資が不要のため、導入ハードルはないに等しい。決済手数料が「無料」の3年間のキャンペーン期間中に、キャッシュレス環境がどう変化するのか興味深い。
更に、決済時の還元ポイントを期間限定で最大5%に引き上げる。店舗側にとっても、利用者側にとっても有難いキャンペーンと言える。今秋には、JCBの非接触型決済「クイックペイ」と連携し、決済拠点が一気に72万カ所増加する。6月末現在の決済拠点は9万4,000カ所のため、単純合計すると約81万カ所だ。出沢剛社長が自信を示した「年内100万カ所」という目標達成には年内にざっと20万カ所を新規に増加させる必要がある。競合がますます激しくなることが予想される今年、トップギアでライバルを抜き去る覚悟が見える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)