暗黒エネルギー解明の鍵は「生命の絶滅」か 人類が生き残っているのはなぜ
2018年7月27日 21:36
5月6日、米国のサイエンス誌に、宇宙膨張を加速させる暗黒エネルギーを解明する鍵は、「超新星による生命絶滅ではないか」という新説が掲載された。この新説を唱えたのは、東京大学天文学専攻・理学部天文学科の戸谷友則教授らのチームである。
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宇宙膨張を加速させている暗黒エネルギーは現代宇宙学において、最大の謎といわれている。
現在観測されている暗黒エネルギーの数値は、実際の50桁以上も小さいといわれている。だが、現代の銀河形成理論によると、暗黒エネルギーの数値が予想した数値の100倍であったとしても、銀河は他の銀河同様に形成される。
観測される値が実際よりもなぜ小さい数字なのか、一方で数値が0である可能性も捨てきれず、これらの謎を解明する鍵が求められている。
今回新説を唱えた戸谷教授らのチームによると、銀河や星は生まれたあと近くの超新星からの放射能によって、生命が絶滅する効果を考察した。
暗黒エネルギーの数値が大きいと、宇宙密度が高いうちに銀河形成が止まってしまい、星の密度が高くなる。その結果、星同士が近い状態で超新星が誕生することによって、生命体が存続できない環境になる確率も上がってしまうのだ。
戸谷教授らのチームの新説によると、これから誕生するであろう銀河系は天の川銀河よりも10倍も密度が高いといわれている。これらの高密度銀河では、星同士の距離が近いため星の生命は短い。超新星となった星は大爆発を起こし、近くの惑星に大量の放射線を送る。それにより生命体は絶滅し、それらを考察した結果すらも残ることはない。
これらの考察結果を考慮しモデル計算を行ったところ、確率的に期待される暗黒エネルギーの数値が、実際に観測される値に近い数字であることが判明した。
ただひとつ暗黒エネルギーの興味深いところは、「我々がいま生きていること」にある。暗黒エネルギーが完璧なものであるならば、他の超新星同様に地球も大量の放射能を受け、人類も絶滅しているはずだ。
だが、我々はいま生きている。暗黒エネルギーによって生命の絶滅が考察されたにも関わらず、我々人類が生きているという謎は宇宙を解明する上で大きな疑問であり、発見なのである。
銀河の最も密な地域で人類が希少であることを考えると、戸谷教授らのチームの新説は既存の説とは違う点から暗黒エネルギーを解明することができるだろう。
今回発表された新説は現代の銀河形成理論よりも、現実的で自然な数値の出し方を発見したことになる。新説とその考察により、暗黒エネルギーの謎の解明に近付くことを期待したい。(記事:中川リナ・記事一覧を見る)