「BENTO おべんとう展」東京都美術館で、参加体験型アート
2018年7月24日 19:50
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」が、2018年7月21日(土)から10月8日(月・祝)まで、東京都美術館 ギャラリーA・B・Cにて開催される。
■お弁当を通じ、コミュニケーションを考える参加体験型の展覧会
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」展は、日本独自の食文化であり、人と人とをつなぐ役割を果たしてきた「おべんとう」をコミュニケーション・デザインの視点から捉えた展覧会だ。会場には現代の作家たちによるインスタレーション、来場者自身が見る・聞く・触れることができる参加体験型のコンテンツなどが用意されている。
■アニメーションからはじまるお弁当の世界
展覧会は、発酵デザイナー・小倉ヒラクのお弁当をテーマとした新作アニメーションからスタートする。親しみやすいキャラクター、口ずさみやすいメロディ、歌詞、振り付けが、観る者をお弁当の世界へと誘ってくれる。
■体験しながら考えるコミュニケーション手段としての“お弁当”
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」展が、数多くある展覧会と異なるところは、来場者自らが作品の中に入ったり、作品を創ったりすることで、会場の作品群に深みを与えていくということ。子供から大人までが楽しめる展示作品は、何気ない日常から見つけたものばかりで、それは全て“アート”なのだと気づかせてくれる展覧会でもある。
■精霊が気づかせてくれる“食”の大切さ
食べることをデザインするイーティング・デザイナーのマライエ・フォーゲルサングの作品《intangible bento》は、音声ガイド「精霊フォン」で“お弁当の精霊”の声を聞きながら、いくつかのブースを進んでいく体験型インスタレーションだ。
各ブースでは、食を通じた人と人との繋がりやお弁当の過去と未来などのストーリーを聞くだけでなく、ほのかに香る匂いや自ら作品を創造することによって、お弁当の「触ることや見ることができない」側面を感じられる。
■お弁当が生み出すコミュニケーション
美術家・小山田徹による《お父ちゃん弁当》は、自身が家族と一緒に実践しているお弁当づくりをアーカイブしたもの。保育園に通う弟のために、小学生の姉がお弁当の指示書を書き、父親である小山田がその通りにおかずを調理し弁当箱に詰めるという。
微笑ましい一家のやりとりが垣間見える作品のなかには、弁当にアートのように描かれた桜島の噴火、蛇行する川、三日月湖といったモチーフがあり、夜寝る前に読んだ本や散歩の時に見つけた植物や虫にインスピレーションを得たデザインも展示されている。
なお、小山田の作品と並んで森内康博による映像作品も公開しており、中学生が自分でお弁当を作る姿を捉えたドキュメンタリー映像を、お弁当箱型のスクリーンに映して紹介。この場所では、お弁当を起点に自分と身の回りの世界の関係について、再考することができそうだ。
■様々な人の“おすそわけ”を作品に
お弁当を「箱」と「布」によって自由にコミュニケーション空間を生み出せるツールだと考える北澤潤が制作したのは《FRAGMENTS PASSAGEーおすそわけ横丁》。3区画に分かれた大掛かりな作品の中、まず入口には、様々な人に協力してもらい集めた、雑貨や日用品、お土産など“おすそわけ”の品をまるで異国のマーケットのような空間が広がる。
その奥には、上野公園のお花見をインスピレーションにしたという2つめの空間。ここでは、誰がどういったものをおすそ分けしてくれたのかを記した記録を読むことができ、ひとつのものを通して本来の持ち主の人となりを感じることができる。さらに奥には、来場者が“おすそわけ”するためのボックスを用意。会場にあるものを“おすそわけ”してもらうこともできる他、次回来場時に自分が“おすそわけ”したいものをボックスに入れて持参すれば、チケット代わりになるという。
■体験展示以外から感じる、お弁当を起点にしたつながり
自らが入り込んで体験する作品だけでなく、写真などから感じられるお弁当のコミュニケーションもある。朝日新聞デジタル&Wで2年間連載された《あゆみ食堂のお弁当》は、「誰々にこんなお弁当を作ってあげたい」という読者のリクエストに応えて、大塩あゆ美がお弁当を創作、平野太呂が撮影し、依頼主にレシピとお弁当箱を届けるというプロジェクト。
また、NHKのテレビ番組「サラメシ」で有名な“お弁当ハンター”の写真家・阿部了がお弁当を黙々と食べる人の姿を映した《ひるけ》は、お弁当を食べる人と作った人との関係性に想いを巡らせたくなる作品だ。
■江戸時代や世界各国の弁当箱
時代や国境を越えた様々なお弁当箱を通じて、食べる目的や状況に合わせてデザインされた"プロダクト"としてのお弁当箱に注目するといった企画も実施。宴など誰かと一緒に食べる共食の場で使われた江戸時代のお弁当箱から、現代日本のひとり分のお弁当箱、そしてアジア、アフリカ、ヨーロッパなど世界のお弁当箱などが並べられる。
■ワークショップも開催
会場では、「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」に出品するアーティストが参加するワークショップ・プログラムも開催。なお、2018年8月20日(月)は高校生以下のこどもとその保護者が参加できるキッズデ―と題した無料イベントも用意している。
■詳細
BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン会期:2018年7月21日(土)~10月8日(月・祝)休室日:月曜日、9月18日(火)、9月25日(火)※ただし8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開室。時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)、金曜日は20:00まで※ただし7月27日(金)、8月3日(金)、10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)はサマーナイトミュージアムのため21:00まで。会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C住所:東京都台東区上野公園8-36TEL:03-3823-6921観覧料:一般800円/大学生・専門学校生400円/65歳以上500円/団体(20名以上)600円※高校生以下は無料。身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳持参者とその付添い1名まで無料。※毎月第3土曜日と翌日曜日は「家族ふれあいの日」により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は、一般当日料金の半額。8月15日(水)、9月19日(水)はシルバーデーにより、65歳以上は無料。いずれも証明できるものを持参。※10月1日(月)は「都民の日」により誰でも無料。■サマーナイトミュージアム割引7月27日(金)、8月3日(金)、10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)の17:00以降は、一般600円、大学生・専門学校生無料(証明できるものを持参)。■相互割引特別展「没後50年 藤田嗣治展」の観覧券(半券可)を本展会場入口で提示すると一般料金から300円引き(1枚につき1名1回限り)。「おべんとう展」の観覧券(半券可)を館内のチケットカウンターで提示すると、「没後50年 藤田嗣治展」の当日券が100円引き(1枚につき1名1回限り)。特設サイトURL:http://bento.tobikan.jp/