天の川銀河を包む高温プラズマの正体は何か 理研の研究

2018年7月23日 21:54

 理化学研究所(理研)は、天の川銀河を包む高温プラズマの起源が、超新星爆発によって銀河円盤部から吹き出したものであるという事実を解明した。

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 夜空を横切る天の川の正体は数千億の星々であり、我々のいる太陽系もその星々と同じく天の川銀河系と呼ばれる一つの銀河系を形成する。といっても、銀河は星からのみ成るわけではない。X線を使って観測すると、天の川銀河は数百万度の高温プラズマによって包み込まれている。

 だが、この高温プラズマは希薄でX線強度は弱く、物理的性質を観察するのが難しかったため、その起源まではこれまでの研究ではよく分かっていなかった。

 今回、その状況を打破したのが、日本のX線天文衛星「すざく」である。X線天文衛星とは、天体から放射されるX線を観測するための衛星のことだ。すざくは日本を中心とする国際協力のもとで開発され、理研もその重要なメンバーの一角であった。

 2005年に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ、様々な成果を上げたあと、バッテリーが劣化したために2015年に観測運用は終了している。

 さて、すざくは広がったX線放射に対して高い感度を持つため、高温プラズマの温度、密度、元素組成などの物理的性質を正確に決定することができた。

 国際共同研究グループは、すざくが10年間に渡って蓄積した107の観測データをまとめて解析し、銀河ハロー高温プラズマの物理的性質を調べた。その調査の結果から、銀河ハロー高温プラズマは、銀河の中で起きた超新星爆発によって生成され、銀河の外へと吹き出したものであると解明されたのである。

 なお、すざくの後継として、2022年に新しいX線天文衛星「XRISM」が打ち上げられる予定で、現在開発が進められている。

 研究の詳細は、米国の科学雑誌『The Astrophysical Journal』オンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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