【第25回香港ファッショウィーク春/夏】1万1千人のバイヤー来場―ピックアップ(1)
2018年7月20日 22:20
「第25回香港ファッショウィーク春/夏」(香港貿易発展局主催)が7月12日、4日間の会期を終了した。14カ国・地域から参加した1,100社が、アパレルをはじめ、素材や雑貨、副資材、テクノロジーなどに関する商品を幅広く提供するなか、カナダや台湾、バングラデシュ、インド、インドネシア、マレーシア、ロシア、タイ、ベトナムなど65カ国・地域から1万1,000人のバイヤーを取り込んだ。アジアを中心としたファッション市場を包括的に見ることができるのが同展示会の強みだが、最新トレンドの展示、テクノロジーに関するセミナー、学生たちによるランウェイショーなど豊富なコンテンツが実施された。会期中のトピックをキーワード&写真とともにお届けする。 #9カ国・地域がグループ出展 同展では、国や自治体、民間支援機関などの支援により、9カ国・地域がグループ出展を行った。タイは、 タイテキスタイル協会(THTI)から4社、タイの産業振興を担う工業省産業振興局(DIP)から10社がそれぞれ参加。初日には、DIPのJARUPHUN JARAYOPHAT副局長が来場して挨拶を行った。インドは、今回初めてインド合成繊維輸出促進協議会(SRTEPC)がとりまとめるなかの生地メーカー20社が参加した。スリランカは同展への参加そのものが初めてで、スリランカ輸出促進庁(EDB)と香港貿易発展局の交換プログラムにより、4組のデザイナーブランドがコレクションを披露した。デザイナーズブランドも多く、アジアのクリエーションの多様性も感じさせる構成となった。 ―スリランカ(Sri Lanka)
「ディモト・サハバンドゥ(Dimuthu Sahabandu)」は、2010年にデザイナーのディモト・サハバンドゥ氏が立ち上げたウェディング&イブニングドレスのブランド。フェミニンなディテールと、ファッショントレンドを合わせた現代的なデザインは、すべて自社工場でのハンドメイド。地元の職人の雇用創出にも貢献している。現在、インドや米国、カナダにも販路を広げているが、香港でのコレクション披露は初めて。「スリランカはカジュアルが主力で、スポーツウエアや既成服などの大量生産のイメージも強い。今回の出展を、スリランカのファッションの幅広さを知っていただける機会につなげたい」。
「ピジョン・アイランド(PIGEON ISLAND)」は2018年にデビューしたばかりのビーチウエアブランド。デザイナーとして15年以上ファッション業界に携わるアジェイ・ビウ・シング(Ajai Vir Singh)氏は、ダイバーとしても活動。海洋の環境保全のために何かできないかと同ブランドを立ち上げた。プラスチックボトルなどのリサイクル素材で製作したコレクションは、スリランカ東海岸で見られるサメと亀をモチーフにしたプリント柄を採用。商品売り上げの約5~9%(プリントに描かれた生物によって異なる)が、環境保全団体に寄付される仕組みだ。サンゴなど保全が求められるほかの生物もコレクションのモチーフにしたいという。 ―タイ(Thailand)
ランジェリーブランド「Parttricia A. Garde」のアーティスティック・ディレクターを務めるTeerawit Jenwitthayachai氏は、仏パリのサンディカ・オートクチュール校(ECSCP)などでファッションデザイン&パターンを学び、高級メゾン「バルマン」で勤務したのち、帰国。2015年8月にタイで同ブランドを立ち上げた。ブライダルドレスなどに使用される刺繍やレースを用いたランジェリーは、繊細でセンシュアルなデザインだが、ブラはノンワイヤー。「タイでは胸を盛り上げるようなプッシュアップ型のブラが主流。女性本来の美しさを引き立てるようなランジェリーを作りたかった」とJenwitthayachai氏はブランド立ち上げの経緯を説明する。中心価格は、ブラとショーツのセットで150米ドル、ドレスで250米ドル。タイでは、エルやヴォーグなどファッション誌のスタイリングに使用されるなど注目度は高いが、プッシュアップ型への支持が根強いタイの女性たちの意識を変えるのはなかなか難しいとも感じている。一方、タイ以外では、日本やクウェートに販路を持ち、売り上げは約2割を占める。「パリやロンドン、ニューヨーク、そして日本のセレクトショップなどでの取り扱いを増やし、世界で誰もが知っているようなブランドに育てていきたい」と夢が広がる。来年1月には、パリで開かれるランジェリー見本市「サロン・インターナショナル」にも出展する計画だ。
PHORNTIP SPORTS WEAR社が運営する帽子ブランド「CAPTHAI」のブランドコンセプトは、“Enjoy Your Life under Sunshine(太陽の下での生活を楽しもう)”。UVプロテクト・ウォータープルーフ・殺菌効果・通気性に優れた素材を採用したスポーツ&アウトドア向け帽子を提供している。マレーシアなどにも販路を持つが、同展では、中国・香港のバイヤーを中心に好反応が見られた。価格帯は、20~40米ドル。
「SX senexi」は、110 Precious社が運営するジュエリーブランド。ジュエリー製作において50年以上の経験を持つ同社がデザインチームを抱え、独創的なアイテムを販売。卸販売を通し、すでに米や仏、独、シンガポール、マレーシアなどに販路を広げている。ピンクサファイヤを贅沢に使用したリングは400米ドル。
ブランド創業者のThanagorn Sittiwongwanich氏(中央) 「SAAMU」は、南アフリカ・スタイルのウエア製作などを得意とするスミス・ガーメント・ファクトリーが手がけるウエアブランドで、今年2018年に立ち上げたばかりの新ブランド。同展では、伝統的なアフリカン柄とスポーツ要素を組み合わせたカジュアルウエアなどを発表したが、日本の着物柄を採用したウエアなどもこれまでに製作。同展の直前に東京で開催された「第9回 DESIGN TOKYO 東京デザイン製品展」にも参加した。価格帯は25~100米ドル。
「Wila」は、レースやチュール、フリルなどを多用したガーリーなテイストを持ち味としたウエアブランド。2018春夏は、ヴィクトリアン調スタイルに手描きプリントなどを施したアイテムを提案している。「アジア特有の“可愛いい”スタイルを打ち出したい」とデザイナーのWilasinee Lueangwattanawant氏。香港や韓国のバイヤーからの反応がいいという。価格帯は70~210米ドル。 ―インド(India) インドは今回、初めてインド合成繊維輸出促進協議会(SRTEPC)がとりまとめ、中小の生地メーカー20社が参加した。SRTEPCアディショナル・ディレクターのSrijib Roy氏は、「品質・技術に優れた中小企業の海外販路開拓をサポートしたい。香港を切り口に、中国、世界各国へとビジネスが広げられることを期待している」と話した。出展者も総じて、同展参加への手応えを感じているという。
西ベンガル州にあるKLHL EXIM PVT社は、2015年にスタートした手刺繍ブランド「Maison D’Ilara」で出展。シルクやジョーゼット、ビスコース、ベルベットなど様々なファブリックに施した刺繍は、デザインやディテールによって価格も異なる。今回はキャラクターや草花など子ども服向けのデザインを訴求。
BALAVIGNA WEAVING MILLSは、オーガニックファブリックやライクラやテンセル、リネンなどを使った織物を提供。全生産量の30%が日本への輸出という。
Vardhman Textilesは、月間1,200万メートルのファブリックを生産。JCペニーやコールズ、カルバンクラインなど有力企業との取り引きがある。8月には香港にバイイングオフィスを設け、仕入れ強化を図る。 1 | 2 | 次へ