増える買い物難民、大都市圏でも増加傾向

2018年7月13日 20:58

 農林水産省の推計によれば、自宅近くにスーパーマーケットなどがないために買い物に困難を覚える65歳以上の高齢者、いわゆる「買い物難民」が2015年時点で824万6000人にのぼった。ショッピングモールなどの大型商業施設が郊外に建設されることも多いため、東京や大阪など都市圏でも買い物難民の増加率は高く、深刻さは増すばかりだ。

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 買い物難民は、自宅から最寄りのスーパーマーケットやコンビニまで500メートル以上ある65歳以上の高齢者で、車の利用ができない人のことを指す。今回の推計によって特に都市圏での買い物難民の増加が顕著になった。10年から15年の5年間で比較すると、全国の買い物難民の増加率が12.5パーセントだったのに対し、3大都市圏での増加率は23.1パーセントと倍近い増加率だ。地方では買い物難民の問題が10年以上にわたって議論されてきたが、今後は都市部での買い物難民の解消に向けた努力が必要になるだろう。

 都市部での買い物難民の増加にはいくつかの要因がある。例えば大型商業施設は広大な敷地を必要とするため郊外に建設されることが多い。長らく高齢者の食卓を支えてきた小売店は地価が高すぎて採算が取れず出店できない、もしくは出店しても廃業を余儀なくされるケースく少なくない。東京では自動車を利用できない単身高齢者が増加しているため、徒歩圏内の商店、小売店が閉店してしまえば今日にでも買い物難民になり得るのだ。そのため宅配サービスなどを導入して、家にいながら食材や生活必需品が買えるというサービスを提供する企業も増えてきている。

 では通販や宅配サービスを充実させれば問題は解決に向かうのかというと、話はそれほど簡単ではない。というのは、農林水産省の推計による買い物難民の数は65歳以上の高齢者のみを対象としており、都市部で車を持たない若者など他の世代を加えれば買い物難民の数はさらに増えるからだ。複数の官庁が問題に取り掛かってはいるが今のところ効果は限定的だ。今後はバスのルート変更や商業施設の建設場所の選定など、車を利用できない人も買い物をしやすくなる環境整備や小売店の出店を支援するための自治体の援助など、官民一体となった具体的な対策が必要になるだろう。(編集担当:久保田雄城)

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