惑星誕生現場の観測撮影に成功した、アルマ望遠鏡の可能性

2018年7月12日 17:43

 工学院大学の武藤恭之准教授らが参加する国際研究チームが、電波望遠鏡の中でも、世界最高の感度と空間解像度を持つアルマ望遠鏡を用いて、惑星誕生現場の高解像度撮影に成功したと6日に発表した。同研究チームには、台湾中央研究院天文及天文物理研究所・アリゾナ大学のロビン・ドン氏などがいる。

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 チームはおうし座方向にある、地球と500光年離れた若い星「MWC758」を観測し、この星を回る「塵の円盤」には、さまざまな構造があることを発見した。以前からこの「円盤」は注目されており、渦巻き状に2本の腕と呼ばれる長い線状のものが観測されている。これは木星よりも大きな惑星が円盤のすぐ外側にあるのではないかと、ロビン・ドン氏が2015年に論文で発表していた。

 今回の観測の結果、円盤の内側には円ではなく楕円形の穴があることがわかり、楕円形の穴を観測出来たのは、さまざまな原始惑星系円盤の中でも初めてだという。また楕円を囲むように、内側・中央・外側の3重のリングがあること、2カ所の塵の集まりがあることがわかった。そして2本の渦巻き腕のうち1本が観測され、渦巻き腕が塵であり反射などではないことが証明された。

 武藤准教授によると「円盤の内側が楕円形を作っているのは(惑星は太陽を中心に楕円軌道上を動くという)ケプラーの第一法則に従ったものだと言える。これは惑星の重力によるものである可能性が高いことを示している」と語っている。

 アルマ望遠鏡は、チリのアンデス山脈中の標高5,000メートルにあるアタカマ砂漠に作られている。高精度パラボラアンテナを66台設置し、それら全体を1つの電波望遠鏡として活用している大がかりのものだ。

 日本・台湾・アメリカ・カナダ・ヨーロッパの国際共同プロジェクトで、2011年から稼働しているが、66台全部そろったのは2014年6月のことだ(そのうち16台は日本製)。運用して間もないアルマ電波望遠鏡は、人間の視力で言うと「視力6,000」になり、様々な結果を出してきたハッブル宇宙望遠鏡の10倍の視力になるという。

 遠い星の観測は赤外線望遠鏡でしか出来なかったが、アルマ望遠鏡の電波望遠鏡は、遠い宇宙の観測を可能にしている。今後も新たな発見が期待される。

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