ボイジャーから39年間の謎、ジュノーが解明しつつある木星の雷のメカニズム
2018年7月9日 21:23
木星で起きる雷のほとんどが、極のところ(特に北極)で起きている。ボイジャー1号が木星を通過する際(1979年3月)に発見したが、科学者たちはその雷の発生メカニズムがわからずにいた。しかし39年の時を経て、木星探査機ジュノーによって、これまで謎だった様々なことが解明され始めた。
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6月7日の科学雑誌ネイチャーに載った論文によると、木星の雷も地球と同様に、大気の上昇気流が原因だという。では、なぜ地球では赤道付近で雷が多いのに対し、木星では赤道ではなく極付近で雷が起きるのか。
NASAのシャノン・ブラウン氏は「木星の雷分布は地球に比べて内側にある」と発言している。これは地球では、太陽熱の上昇気流が雷の元であるのに対し、木星の場合、木星自体の発する熱が上昇気流を起こすことを指している。
太陽から木星の距離は地球の約5倍程で、届く太陽熱は地球の25分の1しかない。でも実際には、それを上回る温度になっていることから、木星自体が熱源を持っていることを示している。ジュノーに搭載されている高感度の機器MWRでわかったことだが、木星の地表の温度は赤道と極付近ではほとんど差がない。
赤道付近の上空の温度は太陽からの熱が覆ってることで、地表との熱バランスが取れており、上昇気流が起きず雷が起こりにくい。ところが極付近では、地表に熱があるのに対して、太陽熱はほとんど届かないため上空の気温がとても低い。このことから大気のバランスが崩れ、地表の熱が上昇気流を起こし雷が多発することがわかった。ただし、北極でより多くの雷が観測される理由はまだわかっていない。
過去、探査機ジュノーは木星最接近を行った際、搭載している高感度のMWR(マイクロ波放射計)によって377回の雷放電を記録している。また3月の論文では、大気はアンモニアの分厚い雲で覆われており、大気圏だけで厚さが3,000キロメートルあることがわかった。その大気の質量は木星の100分の1の質量があるという。木星の質量は地球の300倍であることから、木星の大気だけで地球3個分になることがわかる。
厚い大気で見えない部分の両極の赤外線写真を見ると、北極と南極では、大きなサイクロンが形成されていることが2017年2月にわかった。北極は4,000~4,600キロメートルの直径を持つ9つのサイクロンがある(中央に1個とそれを取り巻くように8個)。南極では5,600~7,000キロメートルの直径を持つ、中央サイクロンとその周りに5つのサイクロン合計6個がある。
これらが、その後どのように変化するのかと継続して調査した結果、両極のサイクロンは消滅も合体もせず、大きさも変わらないままであることがわかった。
探査機ジュノーは、これまでの探査機に比べ、高精度で木星の軌道に近づくことが可能である。また高度な搭載機器により、以前に比べ木星が放射している信号の受信精度が1,000倍になった。つまり、微弱な稲妻信号でも、取り出すことができるようになったのだ。
来る7月16日には、ジュノーは再び木星の神秘に包まれた雲に最接近する。