東北大など、眠りを引き起こす分子を発見 ダーウィン以来の謎を解明
2018年7月9日 10:37
東北大学などの研究グループが、就眠運動を引き起こす分子を同定した。マメ科の植物には夜に葉を閉じて朝には再び葉を開くというユニークな現象があるのだが、これがどのような分子機構によって生じているのかはアレクサンダー大王の時代から謎とされており、晩年のチャールズ・ダーウィンも膨大な研究を行っていた。それが解明されたという形だ。
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東北大学大学院理学研究科(兼務 同大学院生命科学研究科)の上田実教授らの研究グループによれば、就眠運動を引き起こす分子(イオンチャネル)は、葉の上面側の細胞と下面側の細胞に不均等に発現し、それによって葉の動きが生まれるという。
研究に用いられたのは、マメ科の大型植物アメリカネムノキである。ちなみに、「この木なんの木」という有名なコマーシャルに出てくるあの植物である。さて、この植物は生理学的解析に適しており、これまで様々な研究に用いられてきたのだが、モデル植物ではなく、遺伝子操作を行うことができないため、遺伝的解析が進まず遺伝的研究は難しいという難点があった。
今回の研究では、葉を開く運動に関連する、運動細胞の収縮と膨張が着目された。研究グループは、就眠運動を制御するイオンチャネルとして、カリウムチャネルSPORK2、陰イオンチャネルSsSLAH1およびSsSLAH3を発見した。このうち、陰イオンチャネルSsSLAH1が、就眠運動のマスター制御因子として機能していることが明らかになった。
今回の発見は、生物時計が個体レベルの生物行動の制御に関わっていることを明らかにした稀な研究報告例となる。今後、生物時計による生物の行動制御の仕組みも大きく解明されていくことが期待される。
研究の詳細は、米国科学誌「カレント・バイオロジー」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)