デンカ、中期計画でスペシャリティ事業の育成・強化

2018年7月4日 11:42

 デンカは6月18日、連結子会社である西日本高圧ガスなどと共同で溶解アセチレン製造・販売事業を目的とする合弁会社を福岡県北九州市に設立すると発表した。

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 溶解アセチレン事業は将来需要が減少傾向にあることが予測されており、合弁会社に集約・移管して事業を整理・再編する。併せて中期計画でトップクラスのシェアを有するスペシャリティ事業に集中する体制を強化する。

 デンカは、アセチレンランプの灯火用の用途が主流だったカーバイドから1915年に石灰窒素肥料の生産を開始した電気化学工業株式会社が始まりである。

 カーバイドの原料となる豊富な石灰石鉱山と発電所を持つ強みを生かして、アセチレン系有機化学の分野に進出し、酢酸や塩化ビニル、セメントなどを事業化し、1962年には耐熱性、耐油性に優れたクロロプレンゴムの企業化に成功し、石油化学コンビナートに参画してスチレン系事業へ進出した。

 2015年には電気炉により化学製品を製造する意味の「電気化学工業」から「デンカ」へ社名を変更し、電子部品材料、医薬品、化粧品、自前の火力発電所の温水を利用しての養殖ウナギなど幅広い製品を手掛けるデンカの動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期(2019年3月期)見通し

 前期は売上高3,956億円(前年比109%)で、営業利益は前年よりも78億円増加の337億円(同130%)と過去最高益を更新した。

 営業利益増加の要因としては、米国クロロプレンゴムや電子先端プロダクト製品増販により66億円、製品値上げによる利幅改善効果25億円、海外比率39%の中前年よりも円安(1ドル109円->111円)により15億円、スチレン設備非定期修理年のため10億円などの増益要因に対し、電力・製造経費、営業経費増加25億円、海外展開や研究開発費負担増などの先行投資13億円などの減益要因によるものである。

 今期は前期よりも円高の1ドル106円の計画で売上高4,100億円(同104%)、営業利益は360億円(同107%)と2期連続の過去最高益更新を目指す。

■中期計画(2019年~2023年)による成長戦略

 独自性と高付加価値を兼ね備え外部環境に左右されにくいスペシャリティ事業を育成・強化することにより、前期の営業利益337億円(営業利益率8.5%)から2021年3月期営業利益420億円(同10%以上)を目指して次の成長戦略を推進する。

 1.スペシャリティ事業の成長加速化
 ・ヘルスケア: 植物細胞を利用したワクチンなど予防と早期診断への取り組みと、がん細胞だけを攻撃するウイルス製剤など、がん、遺伝子領域への展開。
 ・環境とエネルギー: ゼロエミッションや自動運転化などの動きに先端無機材料を中心としたコア技術を生かした製品開発。
 ・高付加価値インフラ: 最先端材料とソリューションの提供により世界の高度なニーズに貢献。

 2.基盤事業のスペシャリティ化強化
 エラストマー、スチレン系、無機系、樹脂加工などのスペシャリティ化を高め、ソリューションビジネスを強化する。

 3.コモディティ事業の整理、再編

 4.革新的プロセスの導入
 ICTを活用して生産、研究、業務プロセスを改善し、スペシャリティ化促進と働き方改革に取り組む。

 スペシャリティ化事業を強化して世界の化学業界へ挑むデンカの動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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