近大など、汚染水から放射性物質トリチウムを取り除く技術を開発

2018年7月3日 16:22

 放射性物質を含んだ汚染水から、放射性物質のひとつトリチウムを含んだ水「トリチウム水」を分離・開発する方法と装置が開発された。近畿大学工学部の井原辰彦教授、近畿大学原子力研究所、東洋アルミニウム社、そして近大発のベンチャー企業であるア・アトムテクノル近大らの研究チームによるものである。

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 まず要点は、低コストでトリチウム水を高効率に分離・回収できるということ、装置は再生利用が可能で継続的に利用可能であるということだ。

 トリチウム水は放射性物質トリチウムを含んだ水であるが、化学的性質の上で見ると普通の水と性質がほとんど変わらないことから、従来の除染技術においては、水とトリチウム水を分離することは困難であると考えられていた。

 しかし今回、研究チームは炭やスポンジのように小さな孔を無数に持つ「多孔質体」と、ストローのような細い管を液体につけた際に液体が上がっていく現象「毛管凝縮」に着目し、この現象を除染技術に応用しようと考えた。

 開発された多孔質体は、直径5nm(ナノメートル)以下の大きさの微細な穴「細孔」を有し、毛管凝縮によって細孔内に水とトリチウム水を取り込んだ後、トリチウム水を細孔内に保持したままで、水だけを放出する機能を持っている。この多孔質体を格納した装置(フィルター)によって、汚染水からトリチウム水を高効率に分離可能だというわけである。

 また、この多孔質体を過熱すると、孔に残ったトリチウム水は放出され、回収することができるので、装置は繰り返しの利用が可能だというわけである。

 なお、この研究の背景には、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水にトリチウムが含まれているという問題がある。現時点では莫大な容量の保管タンクを確保して汚染水を保存しているわけであるが、今回の技術は、トリチウム汚染水対策として期待することができる。

 なお、本研究成果は特許協力条約に基づく国際出願を行っている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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