「人とのつながりを求める姿」が多くの人に響く!地上波初放送「聲の形」の魅力とは
2018年6月27日 11:30
■漫画・アニメだからこそ表現できた「聲の形」
昨今では小説やドラマだけでなく、漫画やアニメによる社会現象も大きくなる時代となった。社会ブームも巻き起こした「君の名は。」なども記憶に新しいが、2016年には「聲の形」という作品も大きな話題となった。
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この作品は聴覚障害を抱えた少女とある少年の出会いからはじまるが、障害を抱える人にスポットが当たっているのではなく「人のつながり」をしっかりと描いた漫画である。そのクオリティからオリジナルの読み切り、リメイクの読み切り、そして連載と多くの形で読まれることとなった。
その反響からついにアニメ映画化まで実現した本作だが、どのような魅力が詰まっているのだろうか。
■「聲の形」のあらすじ
小学校6年生の石田将也は、いつも楽しいことを探すガキ大将。クラスに1人はいるようなお調子者だったが、彼のクラスに聴覚障害を持った西宮硝子が転校してくる。自分とはまったく違う彼女のことが気になった将也は彼女にあれこれちょっかいを出し始めるのだった。
将也だけでなく他のクラスメイトも硝子と何らかの形でコンタクトを取ろうとするも、やはり耳が聞こえない女の子と分かり合うのは難しかった。クラスにいつまでも馴染めない硝子にいらつきはじめた生徒たちは彼女をのけ者にするだけでなく、補聴器を取り上げるなどのいじめに発展していく。
その中心にいたのは将也だった。そして、ついに硝子の問題が表面化し、校長が対応するまでになってしまう。すると、クラスメイトたちは将也だけをやり玉に上げ、今度は彼がいじめの対象になってしまう。それ以降、人間不信と硝子への罪悪感から消極的になってしまい、自己否定ばかりしながら高校へ進学することになった。
将也は自責の念と友人から裏切られたトラウマから人間と付き合うことはなかった。その中で少しでも罪滅ぼしとしようとろう学校で手話を学ぼうとするのだが、そこで硝子と再び出会うのだったー。
■アニメ映画は地上波初放送が決定
本作は度重なる改訂を繰り返したが、オリジナル版は「週刊少年マガジン」編集部に投稿され、第80回週刊少年マガジン新人漫画賞で入選を受賞している。しかし、聴覚障害者に対するいじめをテーマにしているなど、内容の際どさから一度は掲載は見送られる。
それでも担当編集者の思いから、講談社の法務部および弁護士、さらに全日本ろうあ連盟とも協議を重ねた上で「別冊少年マガジン」2011年2月号にて世に出ることになった。その際、ろうあ連盟からは「何も変えずそのまま載せてください」という評価を受けており、それだけ真に迫るものがある作品というのがわかる。
また、このオリジナル版は該当号の読者アンケートで「進撃の巨人」、「惡の華」、「どうぶつの国」などマガジンの人気連載作を抑えて1位となる。この漫画を読むかアニメ映画を見ればわかるが、本作品は「いじめ」がテーマではない。その本質は「人が分かり合うことの難しさ」であり、言葉を話せば話すほど距離が遠くなってしまうような人間関係の難しさを描いているところにある。
このテーマに真摯に向き合ったのが、2016年9月に上映されたアニメ映画だ。京都アニメーションが制作を担当、公開館数120館と小規模ながら興収23億円を突破。この興行収入は京都アニメーション始まって以来の最高額となり、それだけ本作品が多くの人に響くものになっているのがわかる。
ぜひ一度は見て欲しい作品だが、2018年8月25日にNHK Eテレにて地上波初放送が決定。これが待てない人はまず漫画を読むか、DVDや配信サービスにてチェックしてもらいたい。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る)