進む、働き方改革 日本をリードする電子系企業の多彩な改革
2018年6月24日 20:52
2016年9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置されたことから、大きな注目を集めることになった「働き方改革」。労働力の主力といわれる15~64歳の、いわゆる生産年齢人口が急スピードで減少の一途を辿っている我が国にとって、労働環境の改善は今や、個々の企業だけでなく、国の衰退にも関わる大きな問題なのだ。
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政府の掲げる働き方改革は、9つのテーマをあげて取り組んでいる。「非正規雇用の処遇改善」「賃金引上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」などである。国の政策を背景に、企業としても、社員に心身の健康を保って最大のパフォーマンスを発揮してもらうため、働き方改革が重要視されている。
電子部品などの大手企業の本社が多い京都でも、働き方改革が進んでいる。
日本電産では、2016年秋に永守重信社長が「2020年度までに残業ゼロを目指す」と宣言した。永守社長はそれまで、長時間労働を推奨してきた経営者として知られた人物であったことから、電子機器業界を中心に激震が走った。ただし、同社では生産性の向上を図った結果としての残業ゼロを目指しており、その為に1000億円規模の投資も行うとしている。また、残業代が減ることで社員の収入に不安がないよう、節約できた人件の半分は賞与に、残りの半分は社員への教育投資で還元するという。
また、オムロンでは、グループで働くすべての人の活躍を目指して、女性や障害のある方、LGBTなど多様な性をもつ方が働きやすい環境づくりを強化している。特に日本の職場では、まだまだ性の多様性に対して差別的な意識が根強く残っている。会話や言動は個人の意識の問題だが、同社では会社の設備やシステムなどを見直すことによって、その意識を高めることも重要だと考え、同社のダイバーシティ推進グループを中心とする研修やり、社内の車椅子用トイレを誰でも使えるジェンダーレストイレにするなどの取り組みを行ってきた。その結果、徐々にではあるものの、性の多様性に対する理解もグループ全体に広がり、環境改善になっているようだ。
また、ロームは時差勤務や時短勤務など、働きながら育児や介護をしやすくするための7つの制度を2018年度から一挙に導入した。同社は4月より事務系の有期契約社員を順次正社員化している。現状、技術者中心のために女性社員が約2割程度とやや少ないが、有期契約社員の大半が女性ということもあり、育児や介護関連の人事制度を見直すことで、より働きやすい職場をつくり、人材確保につなげるという。
日本の働き方改革は、まだまだ始まったばかりだ。しかし、これらの企業の取り組みをみてみると、十把一絡げのおざなりな計画ではなく、それぞれに自社の問題と真剣に向き合って検討している改善策であることが伺える。これらの姿勢と取り組みが中小企業にまで波及していけば、日本の未来もそう悲観するようなものではないかもしれない。(編集担当:石井絢子)