「とりあえず3年」と考えることのリスク
2018年6月22日 20:32
最近は転職が一般的になりましたが、やはり短期間で会社を辞めてしまうのは、世間的にはあまり良いこととは思ってもらえません。転職回数が多かったり前職の在職期間が短かったりすることは、転職が当たり前の今でも、あまりプラスに見られないことの方が多いでしょう。
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新入社員などであれば、「この仕事は嫌だ、向いていない」と思って転職を考えたとしても、「とりあえず3年」などとアドバイスをする先輩がほとんどかもしれません。それくらいの見極め期間がなければ、自分に合ったものを見つけることはできないし、初めは嫌だと思っても、やっているうちには実は向いていたなんてこともあるかもしれません。
私もあくまで一般論として聞かれれば、たぶん似たようなことを言います。
ただ、最近はこの「とりあえず3年」に代表されるような、「今の職場で様子を見よう」という行動が、逆にリスクになってしまうケースが増えています。勤続の長さがデメリットになってしまうことがあるのです。
ある大企業の若手社員が言っていたのは、「仕事を身につける速度が遅いのではないか」「仕事の範囲が狭いのではないか」という危惧でした。
確かに良い先輩はたくさんいるし、親切に教えてくれるし、会社全体の体制も整っているとは思うものの、自分と同年代で起業した社長や、ベンチャー企業で何でもかんでもやらなければならない友人たちを見ていると、自分のやっている仕事のレベルはそれに比べて低く、社内でしか通用しない狭い範囲のことではないかと思ってしまうようです。
実際に自分の周りを見ていても、10歳近く年上の先輩なのに、やっている仕事は今の自分と大差がなく、このまま会社に居続けて、自分が世間一般からどんどん遅れてしまうのが心配とのことでした。
この人は結局転職することを決断し、その転職先は今までの会社の100分の1にも満たない規模の会社でしたが、本人はそれまでにないイキイキした様子で仕事をしています。水を得た魚というのは、こういうことを言うのでしょう。前の会社によほどの閉塞感があったのでしょう。
この人が、もしも「とりあえず3年」と考えて行動を思いとどまっていたとしたら、たぶんその3年は、進歩がほとんど望めない無駄な時間になっていた可能性が大きいです。なぜかというと、この会社の上の世代の社員の仕事ぶりを見れば、人材を塩漬けにする傾向の強さが明らかだからです。
年齢構成がいびつな組織、仕事のやり方が古い組織、パワハラ傾向がある組織では、スキルアップの停滞が起こりやすく、社内価値重視のローカルな仕事の進め方によって、長く勤めるほど世間一般から離れてしまい、自分のキャリアへのリスクが増えていきます。こういう場合は「とりあえず3年」などと考えず、一刻も早く転職した方が自分のためになります。
最近、いろいろな人の話を聞いていて思うのは、世間で名の知れた歴史ある有名企業の方が、実は仕事の進め方の古さや非効率が多いことです。
古さというのは「ペーパーレスが進んでいない」「ITを活用しない」「手続き重視でスピードが遅い」などですが、それはその環境で働く人のスキル習得の機会を奪っているとも言えます。
「とりあえず3年」は、一般論としては確かにそうですが、それがリスクになるような会社が増えていることも事実です。
社会人人生が、仮に定年までの40数年とすると、3年というのはその一割近くにあたるわけで、決して小さな比率ではありません。
今の場所に居続けるリスクも、冷静に考えなければならない時代になっています。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。