スズキが中国合弁2社のうち1社と合弁解消!中国市場をどうするつもりか?(上)
2018年6月21日 20:46
スズキが2社ある中国合弁企業のうち、1社との合弁を解消することが発表された。あまたの企業がなびく中国を、スズキはどうとらえているのか?
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スズキは変幻自在だ。81年に米ゼネラル・モーラ-ズ(GM)と提携し、85年からは米国での自動車販売を始めた。89年からはカナダの自動車工場でGMとの合弁生産も始めた。
08年にはGMとの提携を解消し、09年にはカナダ合弁生産を解消した。その後は一部をOEM(相手先ブランドによる受託生産)で現地調達したが、9割以上は日本からの輸出が占めていた。その後為替相場の歴史的な円高ドル安が収益を直撃し、採算の大幅な悪化により輸出が成り立たなくなった。現地生産をしていないスズキに選択肢はなく、12年には米国本土(ハワイを除く)での自動車販売事業からの撤退を発表した。
アメリカでの販売ピークは07年の10万2,000台、撤退前年の11年度における販売台数は2万6,000台程度で、世界販売台数(256万台)に占める北米のシェアは1%程度だった。もともと、アメリカ人の立派な体格に、小型車が主体のスズキでは勝負の土俵自体に問題があったと言える。当時の地域別シェアを見てみると、インドが39%、日本が23%となり、既にインド市場の重要性が際立っていた。
スズキは独VW(フォルクスワーゲン)と09年12月に資本業務の提携を行った。その後、両社の思惑の違いが経営の独自性と環境関連技術分野で表面化し、15年に業務提携を解消している。提携解消要因は契約書への拘り方の姿勢にあったと総括された。スズキは経営権の喪失が懸念されるかのような、追い詰められた状況だった。
16年10月になってスズキはトヨタ自動車と、協業可能な分野について協議を開始した。17年2月6日には、業界を取り巻く環境、安全、情報技術、商品・ユニット補完等の分野での業務提携に向けた覚書を締結した。トヨタが進める電動化への技術サポートや、自動運転技術における協業メリットも期待してのことだろう。
18年5月、トヨタとスズキが提携する上での協議内容が明らかになった。1.スズキが主体となって開発する小型超高効率パワートレインに対し、デンソーとトヨタが技術支援を行うこと。2.スズキが開発した車両をトヨタキルロスカ自動車(株)(以下、TKM)で生産し、トヨタ・スズキの両ブランドでインド国内において販売すること。3.前記TKM生産モデルを含むスズキの開発車両を、トヨタ・スズキ両社がインドからアフリカ市場向け等に供給し、それぞれの販売網を活用して販売するとともに物流・サービス領域の協業を進めることである。
今後はこれら詳細について協議していくことになる。フォルクスワーゲンとの提携で高い授業料を払っただけのことはある。いくら我が道を往くスズキであっても、すべて自前で準備することは出来ない。スズキらしさにこだわりを持ちつつも、柔軟な交渉が可能な相手としてトヨタを選択し、かつ慎重な協議を継続中である。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)