北大、聴力を持たないカナリアも歌に個性を持つ事を発見
2018年6月19日 08:27
カナリアは歌う鳥である。その歌は同じ個体でも毎年変化し、部分的な変動を見せる。今回の研究は、このカナリアにおける歌の変化が、聴力を持たないカナリアにおいても生じるというものである。北海道大学大学院理学研究院の和多和宏准教授らの研究グループが明らかにした。
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ヒトの言語獲得においてもそうだが、基本的に発生学習をする生物においては、聴覚の入力は正常な発声パターンの発達において重要であると考えられる。だが、実際に聴覚の有無が発声パターンの種特異性や個体差においてどのような影響を及ぼすかは明らかでなかった。
歌を歌う小鳥を鳴禽類(めいきんるい)、ソングバードという。ソングバードは発声学中の動物モデルとして、行動神経科学研究で古くから用いられている。カナリアはその一種である。
今回の研究では、カナリアを親鳥の声や自分の声が聴こえない状態にし、その状態で歌の発達や維持がどうなるのかを詳細に解析した。特に、カナリアの歌の経年変化に着目し、1年目の歌と2年目の歌の比較を行った。
結果としては、聴力がないカナリアでも、正常なカナリアと同じく発声パターンの変化が生じ、種特異的な(つまり、カナリアの歌としての特徴を持った)歌を完成させること明らかになった。ただ、聴覚のない個体では、歌のレパートリーそのものは少なくなったという。
さらに、次の年における歌の変化を調べると、耳が聴こえなくても前年の音の要素を維持しつつ、部分的な音要素の入れ替えを行うのも通常のカナリアと同様であった。
以上のことから、カナリアの種特異的な歌の発達において、聴覚によらない生得的なメカニズムが、その特徴ある発声パターンの形成に寄与しているものと考えられるという。
なお、研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)