「司法取引」導入の改正刑事訴訟法が施行 企業への影響は大か
2018年6月18日 00:08
他人の犯罪を明らかにすれば、その見返りに罪が軽くなる「司法取引」を導入した改正刑事訴訟法が6月1日に施行された。米国や英国では自らの罪を認める代わりに罪が軽くなる自己負罪型と他人の犯罪について捜査機関に協力する訴追協力型の両方が司法取引として認められているが、今回の改正刑事訴訟法では後者のみが認められる。
今回新たに運用される司法取引は独占禁止法違反や金融商品取引法違反などの経済犯罪、贈収賄、薬物・銃器関連、破産法、特許法、商標法などに違反した罪だ。これら経済犯罪や組織犯罪は証拠が残らないように巧妙に行われることが多く、関係者の証言が重要な証拠になりうる。今までは他人の犯罪を明らかにしてもメリットがなかったため組織犯罪などの解明が遅れる傾向があった。しかし司法取引によって被疑者にとっては罪の減免というメリットが生まれ、捜査当局にとっては捜査の進展が期待できる。司法取引は被疑者である個人だけでなく、企業も当事者として司法取引を行うことができるため、企業同士の取引における犯罪も明るみに出る可能性がある。今まで捜査の手が及ばなかった経済犯罪、組織犯罪も解決への道のりが容易になりそうだ。
ただ、司法取引には懸念もある。もっとも大きな懸念が冤罪だ。被疑者が自分の罪を軽くしたいがために偽りの告発を行うというケースも考えられる。虚偽の記述をした場合には5年以下の懲役となるが、すべての被疑者が真実を語ると期待することはできない。無実の人が巻き込まれる可能性もないとは言えないのが実情だ。加えて社員などの告発を恐れて企業が委縮してしまうのではないかという懸念も生じる。そのため改正刑事訴訟法では司法取引の成立のためには弁護士の同意がなければならないことが明記された。加えて取り調べの録音・録画など、聴取の可視化もさらに進めていく必要がある。
司法取引によって、今まで埋もれていた犯罪について捜査当局が捜査できる可能性が高まった。しかし司法取引が世論に受け入れられるかは不透明な状況で、西川克行検事総長は慎重な運用を呼び掛けている。今後司法取引が経済犯罪・組織犯罪を暴く一助となるかに注目だ。(編集担当:久保田雄城)