森林大国なのに使われない国産木材 矛盾を抱える日本の森林事情
2018年6月18日 00:09
日本は世界有数の森林大国だ。国連食料農業機関の調査によると、日本の国土面積に占める森林面積は68.5%。国土の7割は森林ということになる。ところが、林野庁の「森林・林業白書」をみてみると、日本は他国と比べて、自国の森林資源をほとんど使っていない。安価な輸入木材が多く出回ることによって需要が減少しているのだ。その為、日本の森林の4割を占める人工林の間伐が行われず、荒廃が進む一方だ。人工林はとくに、適度な時期に伐採して、その後にまた植林をすることで森は若返る。若い木の方がCO2をより多く吸収するので、地球温暖化防止にも繋がる。環境面からみても、国産の間伐材使用はもっと推進していかなければならない。
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そんな日本の森林事情に問題意識を持ち、行動を起こしている企業も多い。
例えば、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームとグループ会社のオカザキホームが2010年から行っている「木望(きぼう)の未来プロジェクト」などがある。
「木望(きぼう)の未来プロジェクト」は、間伐材を加工して製作した小学校学習机の天板を小学校に寄贈し、同社の大工が古い天板と交換するという取り組みで、8回目となる2017年度は計909枚の天板を寄贈。8年で合計11971枚を寄贈している。さらに多くの小学校では同社の社員が出張講師となって「ふれあい授業」と銘打って、森林と間伐の必要性や木の良さについて紹介。授業の後は、カンナがけ体験と、木の筆箱を製作するなど、木材に直接触れることで木の温もりを知る機会を提供している。
また、ベビー用品メーカーのピジョンでは、1986年から「赤ちゃん誕生記念育樹」という活動を行っている。以来、子どもたちの未来に残す森づくりを行う目的で続けられてきたが、近年では、最初に記念植樹をした赤ちゃんが親となり、自身の子のために2世代、3世代で参加するという人も増えているという。
セブン&アイ・ホールディングスも、一般財団法人セブン‐イレブン記念財団が全国17カ所で、植樹から下草刈り、間伐までを行っている森の保育活動「セブンの森」づくりに参画している。同活動は、全国の森林組合、NPO法人などと協定を結び、セブン‐イレブン加盟店やグループ各社の従業員からボランティアを募って実施。そうして得られた木質材はグループ内の店舗資材や事務備品として使用するほか、商品化を進めることで国産木材の活用を促進している。
植樹活動を行っている企業は多いが、中には「植えるだけ」で済ましてしまう活動も多い。しかし、日本国内においては、植えるだけではなく、国産木材に関心を持ってもらい、その使用を促すことが必要だ。上記のような企業の地道なCSR活動が実を結び、広がり、日本の大きな資源である森林が有効に活用される未来を期待したい。(編集担当:藤原伊織)