クマが樹上のドングリを食べる行動は理に叶っている―東京農工大の研究
2018年6月11日 11:57
ツキノワグマは日本を含むユーラシア大陸東部に広く分布するクマである。彼らは時折樹上に登ってドングリなどの果実を食べることがあるが、樹上での採食行動については未解明の部分が多い。しかし今回、ツキノワグマがどのような条件下において木に登るかについて、理にかなった行動パターンが存在することを、東京農工大などの研究グループが明らかにした。
【こちらも】コウモリの超音波は何故混信しないか、同志社大学の研究
東京農工大学と森林研究・整備機構森林総合研究所の共同研究チームによると、ツキノワグマが木に登るかどうかは、個々の木の実のついている量(結実量)の多さと、森林全体の結実の豊凶に影響されるのだという。
クマが木に登って果実などを採食すると、特徴的な痕跡が残る。これは「クマ棚」と呼ばれている。どのような結実状況のときにクマ棚が発生するのかを分析するため、ドングリが実る3つの樹種(※ドングリというのは堅果の俗称であり、特定の植物種を指す概念ではない)、すなわちミズナラ、コナラ、クリを対象にして、クマ棚の形成と結実量の関係が調べられた。
調査は2008年から2014年にかけ、栃木県と群馬県にまたがる足尾・日光山地において行われた。研究の対象となったのは371~481本の木で、そのすべての毎年の結実量と、各年の地域全体の結実量が調査された。
結果はどうであったか。まず、いずれの樹種においても、結実量の多い木ほどクマ棚は形成されやすいことが分かった。同時に、森林全体が凶作の年であれば、普段の年には見向きもされないような木にもクマが登ってドングリを食べるということが明らかになった。
結果として、ツキノワグマはやみくもに木に登っているわけではなく、何らかの方法で採餌行動を厳選しているということが分かったのである。
なお、研究の詳細は、イギリスの動物学誌(英語:Journal of Zoology(略称J. Zool.))のオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)