石油に代わるプラスチック原料「バイオコハク酸」安定供給への道 神戸大の研究

2018年6月11日 09:42

 プラスチック等の化学製品はコハク酸を原料として作られている。コハク酸は現状ほとんどが石油から合成されているが、種々の背景から、これを生物由来で生産する道が模索されている。光合成微生物のラン藻は二酸化炭素からコハク酸を生合成できるのだが、生産量が不十分で、この方法で入手されるコハク酸はコストが現状高くつきすぎる。だが神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の蓮沼誠久教授の研究グループは、このバイオコハク酸の生産効率の世界最高値を7.5倍以上更新することに成功した。

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 ラン藻類による二酸化炭素のコハク酸生産は、つまり地球温暖化原因物質たる二酸化炭素をプラスチックに変えてしまうという、聞けば実に麗しい原理のメカニズムなのであるが、コスト面でどうにもならないという現状があった。

 さて、そもそもラン藻のコハク酸生産はどうやったら増大するのか。まず、そのメカニズムそのものが不明であった。ラン藻の生育温度は30度ほどであるが、そのコハク酸生合成における最適温度は、それよりも約7度高いということが今回の研究の過程において発見された。

 次に動的メタボローム解析を用いたコハク酸増産メカニズムの解析を行ったところ、PEPC(ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)という酵素が生合成のボトルネックとなっていることが分かった。そこで、遺伝子工学的手法によりPEPCの活性を向上させて、ラン藻を37度で培養したところ、コハク酸の生産量が、従来の研究の最高値よりも7.5倍以上も高い値を示したのであるという。

 今後の研究としては、代謝経路の最適化などをはかることで、さらなる増産を目指していきたいという。なお、研究の成果は、国際科学誌「Metabolic Engineering」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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