ヒトと同じ酵素がマイタケから発見される、大阪市立大の研究
2018年6月4日 08:20
大阪市立大学などの研究グループは、酵素トランスフェリンがマイタケに存在することを世界で初めて発見した。トランスフェリンはヒトの血液中において、鉄イオンを運搬するための酵素である。
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研究グループに名を連ねているのは、大阪市立大学大学院理学研究科の中澤重顕特任准教授、工位武治特任教授、愛知淑徳大学健康医療科学部の菅野友美教授、農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門の亀谷宏美主任研究員らである。
なお、マイタケのトランスフェリンは、ヒトの血中のトランスフェリンと、鉄イオンの結合部位が酷似していることが、極低温実験と量子化学理論計算によって証明されたという。
キノコの食品機能、また薬理効果については昔から色々と言われているところであり、マイタケの摂取の栄養効果が一つの実証を得た形である。また、従来の説ではトランスフェリンは脊椎動物や昆虫など動物にしかない、とされていたが、その通説は覆ることになったということのようだ。
マイタケのトランスフェリンの発見であるが、栄養を分析したら発見された、というほど簡単なわけにはいかなかった。まず、キノコの中の金属タンパク酵素というもの自体がこれまでほとんどその存在可能性について着目されていなかったのだが、今回の研究はまずそこに注目した。
そこで、極低温化において電子スピン共鳴法を用い、鉄イオンタンパク酵素がマイタケにも存在することを突き止めた。さらに、高度な量子化学計算によって、それがヒトのトランスフェリンと同じものであることを突き止めたのである。
地球上の生命が元を辿れば全て同じ流れの上であるものであるにせよ、キノコと動物とでは進化樹形図上の分岐が限りなく古い。にも関わらず、菌類であるキノコと動物においてトランスフェリンという共通の酵素が確認されたことは、化学の歴史に一石を投じるものであるという。
なお、研究の詳細は、Food Chemistry誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)