南極の湖には何がある?国立極地研究所の小型水中無人探査機で調査
2018年5月27日 20:50
あまり知られていない事実ではあるが、実は南極大陸には湖沼がある。一般にイメージされる様相の通り、南極大陸のほとんどは氷床に覆い尽くされているのであるが、大陸面積のわずか2%、生物が活動する露岩域がある。この地にある湖沼の深部を、国立極地研究所の小型水中無人探査機が探査し、その調査結果の報告を行った。
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南極大陸の露岩域は季節によってはコケや地衣類が繁殖し、特徴のある景観を織りなすことから、「南極オアシス」と呼ばれることもある。溶けた水が窪地に溜まり、大陸縁辺部ではベストホールド・ヒルズ(Vestfold Hills)、シルマッハ・オアシス(Schirmacher Oasis)、昭和オアシス(Syowa Oasys)、 バンガーヒルズ(Bunger Hills)、ラースマンヒルズ(Larsemann Hills)など、またサウスビクトリアランド内陸部にあるドライバレー(Dry Valleys)などに、多様な氷河湖が形成されている。南極半島部、その周辺の島嶼などにも湖沼地帯がある。
さて、探査であるが、今回用いられたのは新たに開発されたROVと呼ばれる探査機である。目的は、これまで定量的な探査に成功した例がなかった、南極湖沼「スカルブスネス・長池」に生息するコケボウズと呼ばれる生物群集の分布調査を行うことである。
これまでにもダイバーによる調査は行われており、コケボウズが得意な三次元構造を持ち、深度によって大きさや形状が異なることは明らかになっていた。ただ、具体的にどの深度ではどうなのか、詳細な定量データが不足していた。そこで、ROVの導入したのである。
南極大陸宗谷海岸沿岸の湖沼、スカルブスネスの長池、仏池、くわい池で調査を実施したところ、水深10メートル付近でコケボウズの形状やサイズが大きく変化する様子が観測出来たという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)