東芝、改正RoHS指令規制対象物質の簡易検査法を開発 コスト50分の1
2018年5月25日 06:56
東芝は22日、欧州RoHS指令の規制物質に追加されるフタル酸エステルの低コストで分離能の高い簡易検査法を開発したと発表した。
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RoHSは電子電気機器における特定有害物質の制限に関する欧州連合(EU)による指令である。グローバル化が加速される現在、EUへの輸出を考えるならばクリアすべき項目の一つだ。今回、欧州RoHS指令の規制物質に追加されるフタル酸エステルの低コストで分離能の高い簡易検査法を開発。半導体などの製品をグローバルに扱う東芝は、従来もこのような開発は通常の業務の一つであったであろう。この技術をビジネスに展開することが、新生東芝の新たな戦略であろうか。
●RoHS指令とは
特定有害物質の使用制限に関する2011年付けの欧州議会・理事会指令である。その指令は2003年に遡る。電気・電子製品に鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール、およびポリ臭化ジフェニルエーテルの6物質を使用することを原則禁止とした。加えて、2014年にフタル酸の新たに4物質の追加を検討していた。
対象製品は冷蔵庫などの家庭用製品から情報処理製品や医療など11品目に及ぶ。重要なことは、生産者の義務を謳っていることだ。グローバル化の中でRoHS指令を遵守することで製品の付加価値を見出す企業も多い。ロームなどがその典型であるが、厳しい4つの規則がある。
先ず、RoHS指令への適合性評価を実施して適合宣言し、その根拠を明示する。次に、この適合を維持管理することだ。製品には設計変更や規格変更が伴う。日常のプロセスに有害物質使用禁止を意識することが重要だ。
加えて、製造番号などから有害物質のトレサビリティを義務付けている。そして、製品に不適合があれば製品をリコールし、加盟国の所轄当局に直ちに通知する義務がある。
●RoHS指令対応(東芝、フタル酸エステル検出)のテクノロジー
2019年7月からRoHS指令の規制物質に4種のフタル酸エステルが追加される。EUへの輸出製品を持つ多くの企業にとって、フタル酸エステルの管理体制の構築は急務だ。調達した材料にフタル酸エステルの含有有無が確認できない場合、企業は自社で検査する必要があるからだ。グローバルに事業を展開してきた東芝が、このRoHS指令に着目したのは、本来の強い技術を再認識した結果であろうか。
従来の検査法ではこの物質の検出は非常に高価であるという。機器分析の導入コストが1000万円以上である一方、本技術の導入コストは約20万円と安価だ。
有機溶剤による抽出後に薄層クロマトグラフィ法により、フタル酸エステルを分離、検出する方法を採用することで、コストを50分の1に低減。抽出操作において、0.5 ミリリットル以下と少量の有機溶剤で、母材を溶かさずに対象フタル酸エステルを抽出できる簡易な検査を可能にした。
発表ではグループ内での活用を謳っているが、新生東芝が敢えてこの技術の価格を提示することは、外販を目指す狙いがあるのであろうと推測するが、如何であろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る)