日立と東レ、サウジアラビアで省エネ型の海水淡水化システムを実証実験

2018年5月15日 05:55

 日立製作所と東レは14日、サウジアラビアの海水淡水化公社(SWCC)と連携して、省エネルギー型海水淡水化システムの実証設備の設計・建設・運転を行い、早期実用化に向けた性能検証とビジネスモデルの検討を進めると発表した。実証事業期間は4月から2023年3月の5年間だ。

 今回の受注は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業」の枠組みの一環だ。

 サウジアラビアは、国土の大部分が年間降水量100ミリメートル未満の乾燥地帯であり、水資源が不足している。そのため、生活用水の多くは海水淡水化に依存しており、淡水生産量は世界最大規模である一方、海水淡水化を行うための消費エネルギーが大きいことが課題という。

 多くの海水淡水化プラントは、老朽化に伴う更新時期を迎えているとともに、長期政策方針「サウジアラビア・ビジョン2030」に基づく工業化の進展や人口増加により引き続き水需要は益々高まる。SWCCが日本の省エネルギー技術に関心を示し、日本政府関係機関の協力のもとに、大型海水淡水化プラントの新設・更新の契約にこぎ着けた。

●省エネルギー型海水淡水化システムの特長

 日立と東レは、2016年12月から、1日に500立方メートルの造水能力を持つ小型プラントを用いた実証試験をアラビア湾沿岸に位置する都市アルジュベールのSWCC研究サイトにて実施。今回、サウジアラビアの紅海沿岸に位置する都市ウムルジに1日の造水能力10,000立方メートルの省エネルギー型海水淡水化システムの実規模実証設備を新設、実証事業を開始する。

 実証設備には、内閣府の研究開発事業「最先端研究開発支援プログラム」で確立した「Mega-ton Water System」の成果をベースに、日立が開発した低圧多段高収率海水淡水化システムと、東レが開発した低圧海水淡水化RO(Reverse Osmosis:逆浸透法)膜を適用。地道な技術の積み重ねで実現した、省エネルギー型海水淡水化システムだ。

●海水淡水化システム(日立と東レ、省エネルギー型)のテクノロジー

 低圧多段高収率海水淡水化システムは、RO膜ベッセルの配置を多段にし、供給水流量・圧力を制御して透過水量を平準化。RO膜の性能を最大限に引き出す一方、ポンプの動力エネルギーを低減可能だ。

 低圧海水淡水化RO膜は、低圧運転でも高い塩除去率を実現。この低圧運転でも高圧と同等の塩除去率を持つことから、約20%の省エネルギー化を目指す。加えて、原海水量の低減に伴う前処理設備の容量縮小により、建設コストの低減も図る。

 省エネルギー型海水淡水化システムの実証・実用化で、サウジアラビアをはじめ中東地域の水問題解決に貢献する日は近い。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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