福島産農産物、価格低迷が続く 安全性に不安イメージ払拭できず
2018年5月11日 14:10
福島原発事故から7年以上が経過している。農産物に関しては当初の風評被害は減少したものの、安全性に関する心理的不安は未だ十分に払拭されていないようだ。
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政府は福島復興再生特別措置法にもとづき福島で生産された農産物等の販売不振などの実態を明らかにするための調査を行い、その結果に基づき販売業者等に対し指導、助言、その他の必要な措置を講じている。
先月27日、復興庁、農水省、経産省は連名で、3月28日に公表された17年度福島県産農産物 等流通実態調査の結果に基づき小売業者等への指導、助言等に関する通知を発した。実態調査の結果では、「福島県産農産物等は、全体として震災前の価格水準まで回復していない」と結論づけられている。
消費者からの福島県産農産物等に対する産地に関する照会は減少しており、現在ではクレームはほとんどない状況である。しかし、消費者の一部には未だ福島県産に対しては「安全性に不安を感じる」との意見も存在し、イメージとして消費者の心理的不安が十分に払拭されたとは言いがたい現況のようだ。
小売業者からの情報では、海外顧客の中には産地を気にするケースも少なくなく、産地について問われるケースが少なからず存在するようだ。海外顧客においても福島産の負のイメージは払拭されていない。
小売業者では福島県産以外の産地で需要が十分賄われているため積極的に福島県産を取り扱う理由が見いだせないという意見も挙げられている。卸売業者からの情報では、販売先が産地指定で注文して来るケースが少なくなく、販売先が福島産以外を好む傾向も存在するようだ。 震災直後の不当な安価での販売が行われる事例は確認できなかったものの、市場全体として取引価格を上昇させる見込みがつかないのが現状だ。
こうした調査結果を前提に、復興庁、その他関連省庁は、小売業者に対し福島産を理由にした取り扱い回避・買い叩きの禁止、消費者等への資料等を用いた丁寧な説明の実施を指導・通知した。また卸売業者に対しては産地指定への過剰な配慮をしないこと、安全性の確認を行っていることを十分説明すること、風評被害に対する損害賠償制度の存在を理由に不当な買い叩きをしないこと等を指導・通知した。
さらに、生産者に対してインターネット等を利用し新規顧客を開拓することを助言するとともに、販売促進・風評情報に関する相談窓口を関係省庁に設置するなどの必要な措置を講ずるとしている。(編集担当:久保田雄城)