ツタンカーメンの墓に「秘密の部屋」はなし 論争に終止符
2018年5月8日 06:57
●レーダー探査による3度目の正直
エジプト当局は、紀元前14世紀のエジプトのファラオ「ツタンカーメン」の部屋の調査結果を発表した。2015年に仮説が立てられた後、同年に地中レーダー探査技士・渡邊廣勝氏が調査を実施し、2016年にはナショナル・ジオグラフィックも調査に参加した。今回のトリノ工科大学のレーダー調査は、3回目となる。しかし、ツタンカーメンの墓所となっていた部屋のあらゆる壁の背後には「秘密の空間」は存在しないことがあきらかになった。
【2015年に発表された説は】ツタンカーメンの墓の隠し部屋に謎の王妃が埋葬されている?
●2015年に考古学者ニコラス・リーブスによって立てられた仮説
英国の古代エジプト学者ニコラス・リーブスは2015年、ツタンカーメンの埋葬された部屋の壁の向こう側に秘密の通路か部屋があるという仮説を発表していた。リーブスはさらに、その空間がツタンカーメンには姑に当たる王妃ネフェルティティに関連するものだとも主張していたのである。ネフェルティティは、ツタンカーメンの父アクアンエテンの正妃であり、その娘アンケセナーメンがツタンカーメンの妻であった。
この仮説は、考古学者たちのあいだで大きな論争を呼んでいた。考古学ファンのあいだでは、非常に魅力的な説として支持する人も多かった。2015年に渡邊廣勝氏が調査したさいには、部屋の北と西側の壁の向こう側に扉のようなものがあると発表された。しかし翌年のナショナル・ジオグラフィックによる調査では、この痕跡は認められなかった。
今回、エジプト当局とトリノ工科大学の共同調査により、この論争にも終止符が打たれた。調査は、壁に穴を開けることは不可能であるため、レーダー探査機で行われた。その結果、ツタンカーメンが埋葬された部屋のいかなる壁の向こう側にも、別の空間はないことが判明したのである。
●仮説が本当であれば世紀の大発見であったが
レーダーによる調査は、今年2月にはじまった。エジプトの考古学関係者は、最新の技術を駆使したレーダー探査機の開発にも携わったトリノ工科大学のフランコ・ポルチェッリ教授のもとに赴き協力を要請。2月に、同大学の研究者たちが1週間にわたってツタンカーメンが埋葬された部屋のあらゆる場所を調査し、データを収集した。
そして5月6日、エジプト考古省は正式に「ツタンカーメンの墓所の隣、および近辺にはいかなる隠し部屋もない」ことを発表したのである。
今回の調査には、トリノ工科大学のほかにリヴォルノの「Geostudi Aster」とトリノの「3D Geoimaging」も全面的な技術協力を提供している。
ポルチェッリ教授は、「墓所の壁となっている岩の向こう側には、人間の手を経て作られたと推測される空間は一切認められなかった。現在の最新技術を有した機械による調査によれば、隠された通路も部屋もないことが断言できる」と語っている。