産総研と金沢大、ダイヤモンドの損失が少ない新しい加工技術を開発
2018年5月5日 20:32
高価な宝石として知られるダイヤモンドは、もともと工業用途にも多用されているが、現在では省エネルギー・低炭素社会に向けた「究極のパワーデバイス」としても期待されている。今回、産業技術総合研究所などの共同研究により、ダイヤモンドの高精度な高速・異方性エッチング技術が開発された。
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研究チームに名を連ねているのは、金沢大学理工研究域電子情報通信学系の徳田規夫准教授、大学院自然科学研究科電子情報科学専攻博士後期課程の長井雅嗣氏ら、産業技術総合研究所先進パワーエレクトロニクス研究センターダイヤモンドデバイスチームの牧野俊晴研究チーム長、山崎聡招聘研究員、加藤宙光主任研究員ら。
さて、なぜダイヤモンドがパワーデバイスとして期待されているかであるが、ダイヤモンドは極めて高い絶縁破壊電界(絶縁体に電圧をかけた際、絶縁状態が保てなくなる電界のこと)とキャリア移動度(固体中で電流に寄与するキャリア(電子、正孔)の動きやすさの指標のこと)、熱伝導性を有するからである。
だが、ダイヤモンドは硬い。ダイヤモンドより硬い物質は存在するが、とにかく硬い。それ故に有用であるという部分もあるのだが、加工がとにかく難しいのが難点である。ダイヤモンドのエッチングによる加工には、従来の方法としてはプラズマプロセスによるものしか存在しなかった。だがこれは時間がかかる上にプラズマダメージが形成されてデバイス特性が悪化するという問題があった。
そこで今回、研究グループは、プラズマを用いないニッケルの炭素固溶反応によるダイヤモンドエッチングによる、高速・異方性エッチング技術を開発したのである。
研究の成果は、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載され、また、「ダイヤモンドの加工方法」として特許出願されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)