日本電産、EV駆動用モーターに本格参入 産業用ロボットも増産
2018年5月5日 10:13
日本電産は、電動車の駆動用モーターシステム「E-Axle」を開発し、19年から生産を始める予定だ。同社は短距離の搬送に活用されるLSEV(低速電気自動車)向けの駆動用モーターを生産してきた。今回、より幅広いマーケットであるEVやPHEV向けの駆動用モーターへ、初めて本格的に参入する。
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今回のシステムは、駆動モーター、ギアボックス、およびインバーターなどから構成される。出力は40k~150kW、トルクは同1200~2550N・mで、対象車種は小型車からセダン、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)までと幅広い。従来品と比べて軽量小型化に成功し、出力130kW品の場合の重量は80kgである。冷却システム搭載タイプの駆動モーターを単体で販売することも予定され、要望によって電動ウオーターポンプや、電動オイルポンプなどとのセット販売も可能という。
同社の車載向けのモーターはこれまでパワステやシートの調整が中心だった。現在、ヨーロッパや中国で内燃機関からEVへの転換が鮮明となり、全体的には大きな転換点とも言える。このタイミングを捉えて、新興国自動車メーカーへの供給をすることで、25年度に駆動用モーターの売上1千億円超を目指すとしている。
工場の自動化を促進するロボットの増産も進めている。国内外5拠点に約300億円の投資を行い、月産能力を20年には17年比3倍の約30万台まで引き上げる。人手不足の日本のみならず中国においても工場自動化への投資は増えており、生産性向上のため、自動化投資がロボット等の生産へ向かっている。
産業用ロボットや搬送機械の駆動部分に使用される「減速機」は、モーターを調整してパワーを制御するロボットの主要部品で、毎年30%のペースで市場が拡大している。この減速機を傘下の日本電産シンポ(京都府長岡京市)で増産する。また、長野県上田市に新工場を稼働させ、フィリピンのHDD用精密モーター工場は減速機工場への衣替えも行い、20年には減速機の生産能力を17年実績の8倍に当たる月16万台に引き上げる。
日本電産はEVやロボット関連へのシフトを進め、30年度の連結売上高10兆円を目指す。今期見通しの7倍にもなる遠大な計画だが、今まで積み上げて来たM&Aの成果を、大きな果実へと成長させる目論見だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)