体から切り離された豚の脳が36時間機能 「死」の概念に疑問を投げかける
2018年5月4日 21:56
●36時間機能していた切断された豚の脳
イェール大学の研究者ネナド・セスタン氏とその研究チームによると、体から切断された豚の脳が、36時間生存していたことが確認された。この研究結果は、アメリカ国立衛生研究所が開催する脳科学学会で発表される予定にとなっている。
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●屠殺場から調達した200頭の脳を調査
屠殺された豚の脳200頭分は、新たに開発された血液を供給する技術によってふたたび機能したことが確認された。測定された脳波は昏睡状態にある脳と同様の平坦なものであったが、神経細胞は正常な活動を行っていることも認められたのである。つまり、技術によって細胞の一部は死後も再生が可能であることが証明されたため、「死」の概念についての論争が始まる可能性がある。
●さまざまな医学の分野からは
生物医学の専門家たちは、もし人間の脳が今回の研究と同じ反応をした場合、「生存」と認めるかは非常に疑問だとしている。また、神経医学の研究者たちは、アルツハイマー病や脳腫瘍の新たな治療法の可能性を、今回の研究に期待しているという。
●新たな血液供給の技術「BrainEx」
今回、脳にふたたび血流を流すことに成功した技術は、「BrainEx」と呼ばれている。チューブとポンプで構成された回路によって、動物と同じ体温の代替血液を脳に送りこむシステムである。開発したセスタン氏は、公式に発表するまでは詳細は公表しないとしている。
●すでにはじまった「脳」をめぐる論争
すでにこの研究については、簡略な結果が雑誌『Nature』に掲載された。これを受けて、セスタン氏自身も含めた17人の神経学者や倫理学者たちが人間脳の実験に対する規則に関する議論を行ってる。いずれの学者も、人間の脳に関する実験の規則を変更するべき時がきているという意見で一致した。
世論が、こうした実験に対して必ずしも肯定的ばかりでないことは学者たちも承知しているようだ。しかし、議論に参加した17人の学者たちの総意は、脳の機能の代替となる研究が初期段階に入った現在、研究の成功のためには社会全般にこうした研究が受容されなければならない。医学や薬学の発展のためには規則の改正も視野に入れなくてはいけない、というものであった。